個票データを用いた研究成果
バブル期に家計の金融資産選択行動は変化したか?
研究者:鈴木亘(東京学芸大学)
*カッコ内の所属は、研究成果完成当時
完成時期:平成16年12月
本稿は、80年代後半の資産価格高騰の原因として、家計の資産行動の変化に着目し、バブルの生成や増幅に家計行動が寄与したかどうかを分析した。80年代後半、家計は株式や債券などのリスク資産保有率を急速に高めているが、これがもし、収益率や所得の増加などの外部的な要因を反映しているのに過ぎないのであれば、家計行動はバブルを映す「鏡」にすぎず、原因とは判断できない。一方、この時期に選好や効用が変化して資産選択行動自体が変化したのであれば、家計行動がバブルに寄与した可能性がある。従来の研究では、バブル期の家計のリスク資産保有率の上昇は外部的要因の反映にすぎないという結論を得ていたが、推計期間が短いという問題があった。本稿は金融広報中央委員会「家計の金融資産に関する世論調査」(旧貯蓄広報中央委員会「貯蓄と消費に関する世論調査」もしくは「貯蓄に関する世論調査」)の1983年から2003年までの21年間の個票データをプールすることにより、改善を図った推計を行った結果、先行研究とは逆に、バブル期に資産選択行動自体が変化し、それ以前やそれ以後の行動からは予測できないほどリスク資産選好が高まったことを示唆する結果を得た。