個票データを用いた研究成果
住宅資産デフレが家計の消費と労働供給に与える影響−1946-1965年生まれの年齢コホートに注目して−
研究者:周燕飛((独)労働政策研究・研修機構 研究員)
*カッコ内の所属は、研究成果完成当時
完成時期:平成16年12月
1992年以降の住宅価格下落により、持家世帯のバランス・シートが悪化し、消費不振を招いていると言われる。本研究は1991年から2003年までの家計データを用いて、住宅資産デフレの被害を受ける確率がとくに高いと疑われる年齢コホートに注目し、持家の有無が彼らの消費と労働供給行動に与える影響を分析した。
推計結果によれば、(1)まず、ほぼすべての年齢コホートについて、「持家世帯」の消費額は「非持家世帯」より低く、その格差は若いコホートほど顕著である。つまり、住宅資産デフレの影響で、「持家世帯」は家計消費を抑制していた可能性が高い。(2)第2に、本稿が注目した1946-1965年生まれの年齢コホートにおいては、「持家世帯」の共働き率が「非持家世帯」より有意に高い。つまり、これらの世帯は、住宅資産デフレの影響で労働供給を増やした可能性が高いと考えられる。(3)第3に、バブル経済崩壊後に住宅を購入したと考えられる1966-1975年生まれの年齢コホートが受けた住宅資産デフレの影響も深刻のようである。このコホートの「持家世帯」中、「債務超過」の不安を抱えている世帯の割合は、2003年には1956-1965年生まれのコホートに続いて高い41.0%に上っている。