金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
7.高等学校における金融教育
(3)高等学校における金融教育の指導計画例
ここでは、高等学校における金融教育の指導計画例を紹介する。高等学校においても、公民科、家庭科、特別活動、総合的な学習の時間、商業科をはじめとして、多くの教科等で金融教育の指導が可能である。ここでは、各教科等における単元の指導計画例に加え、評価規準、特徴的な授業の詳しい指導案を示すとともに、授業で使用するワークシートも掲載する。ここでは下記の指導計画例の特徴を簡単に紹介したい。
現代社会の第1の指導計画例では、車の購入時の選択の観点、自動車産業の仕組みなど、個人の立場とマクロ的な観点の双方から、高校生が関心をもちやすい「車」を教材として経済を学ばせる例を取り上げている。
現代社会の第2の指導計画例は、現代の経済社会の動きに関連させながらインフレとデフレ、国民所得と国富、成長と循環について理解させるとともに、幸福・公正・正義などの価値を用いてインフレ・デフレや経済成長に関する政策を考えさせる展開となっている。
現代社会の第3の指導計画例では、教師の用意したカードとサイコロを使って、生徒に経済の不確実性の下での金融商品の選択を模擬的に体験させ、金融商品は利益が出たり損失が出たりする特徴があることや、自己責任の下で意思決定する必要があることを理解させようとする取り組みを紹介している。
現代社会および政治・経済の指導計画例は、疾病や障害などの原因により発生する経済的な不安(リスク)に対するセーフティネットとして、その不安(リスク)を社会全体で分かち合う社会保障制度の意義や役割を理解させるとともに、社会保障制度の現状と課題を、少子高齢化の進行や、財政との関連、保険料の負担などとの関係において考察させる取り組みとなっている。
政治・経済の指導計画例では、金融政策のシミュレーション学習の指導例を紹介している。ここでは、分かり難いといわれる金融政策について、現実に則した正しい理解を導くために、シミュレーションを交えた参加型のグループ学習の手法を取り上げている。
家庭科の第1の指導計画例は、お金を通して自立した社会人・消費者として必要な知識や意思決定力を身に付けさせることを目指し、多重債務問題や悪質商法の問題、ローンの利用上の注意点、生活設計を取り上げ、副教材を有効に活用する展開となっている。
家庭科の第2の指導計画例は、人生における様々なリスクとその対策を検討した上で、生徒自身がリスクとその対策も含めた「人生すごろくゲーム」を作り、他生徒の作品を鑑賞することで多様な対策への気付きを促し、さらに社会保障制度を含めた生活資源の重要性と生活設計について理解を深めさせる取り組みを紹介している。また、続いて、様々なライフコースに即した家計シミュレーションを行うことにより、希望するライフプランの実現には金銭収入が重要であることが実感できる取り組みとなっている。
特別活動の指導計画例は、文化祭への出店を企画・実施する学習の指導計画の例を紹介している。活動の工夫やその過程での金銭の管理を通じて、経済のメカニズムを体験的に学習することができる指導内容となっている。
総合的な学習の時間の第1の指導計画例では、環境、福祉、情報、国際という現代社会が直面している課題の解決や地域の活性化に役立つために企業を立ち上げるという課題を設定する。グループごとに立ち上げたい企業を企画し、法律・会計的な側面にも着目し、株主総会での決算発表までをシミュレーション学習させる事例を取り上げる。
総合的な学習の時間の第2の指導計画例では、職業選択について生涯にわたる生活設計や現代社会の実態と関連付けながら、自己の適性を生かして考え抜いていく取り組みを紹介している。ニートやフリーターの増加が社会問題化している中、重要性の増している学習課題の指導事例である。
総合的な学習の時間の第3の指導計画例は、現代社会における「お金」に着目させる内容となっている。高校生が日常的に利用するコンビニエンスストア、インターネットや携帯電話でも多様な電子マネーが利用可能である。最先端の金融技術と高校生の生活が密接につながっていることや、今後の金融のあり方にも意識を向けさせる指導内容である。
商業科の指導計画例では、生徒にも身近な計算ソフトを使って、自動車ローンの分割返済や積立金、ライフプランニングのシミュレーションを具体的な数値例に基づいて計算させる。こうした取り組みは、生徒の生活技術の向上に資するだけでなく、経済的な問題への興味・関心を高める上でも非常に効果的な取り組みと思われる。
これらの大半は学校で実践された事例であるが、指導計画例として紹介している。なお、指導計画例の総授業時数は目安であり、各学校の実情に応じた配分が望まれる。これらの指導計画例の全体または一部を取り入れることに加え、これらの指導計画例に含まれるアイデアや工夫を取り入れることも効果的である。さらに、同一学校段階の指導計画例だけでなく、他の学校段階の指導計画例も参考にすることが期待される。
高等学校における金融教育の指導計画例
*1 各指導計画例の概要(実施学年・単元の目標・学習の評価・展開の特色等)、指導計画、本時の展開、ワークシート及び資料等が閲覧できます。
*2 金融教育の授業で実際に使用するワークシート・資料等を掲載しています。
*3 ウェブのみの掲載としています。
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