経済指標の見方
経済データの基本的な読み方
ここで取り上げたデータの多くは月次で発表されているものです。これらのデータは基本的には前年の同じ月のデータに比べてどの程度上下したかという尺度で判断されるのが普通です。
また多くのデータは金額ベースで示されていますが、「金額=単価×数量」ですので、金額が下がっても単価の下がり方がそれ以上であれば、数量ベースでは増加していると見なければなりません。
なお、データの正式名称と発表機関ならびに発表時期は、最後に掲げてある「景気関連データに慣れるためのシート」中に書き入れておきました。
景気関連データに慣れるためのシート
1.全国の家計消費支出
家計が1ヶ月間にどの程度の消費を行ったかを示します。
どんな意味があるの
家計がどれだけの消費を行うかは、経済全体の動きを見るうえで極めて重要なデータです。経済成長率の内容を分析すると、その55%程度が家計消費に依存しており、経済成長率に対してもっとも大きな影響力を持つからです。そのため「企業の設備投資はまずまず伸びているが、肝心の個人消費が停滞しているため、景気の底入れはまだ」といったりするのです。
この統計は、総務省統計局が毎月発表する「家計調査報告」に含まれています。この「調査報告」ではこのほか「実収入」「可処分所得」「平均消費性向」などのデータも示されますが、この「消費支出」は「実収入」との関係が深いことで知られています。
全国の市町村から一定の基準によって世帯を抽出したうえで、「家計簿」(調査票)をつけてもらい、これを集約して消費動向を把握するという方法がとられています。
2.完全失業率
仕事につくために就職活動を行っているが、調査期間中に仕事についていない人を完全失業者と呼びます。この完全失業者が労働力人口(完全失業者プラス就業者)のうちの何%を占めるかを示します。ここで言う完全失業者とは、就職が可能で、就職活動をしているにもかかわらず、就職できていない人のことをさします。したがって、就職活動を行っていない人は失業者とはみなされないのです。
どんな意味があるの
景気が悪くなってくると、企業が活動するうえで適正だと判断する雇用者数が減ってきます。すると、過剰人員と見なされた人が勧奨退職などで失業しがちです。したがってこの統計は企業がどの程度の人員を雇用するゆとりがあるかを示しているとも言えます。その意味では企業景気の行方を見るうえでもとても重要なデータです。
世帯ならびに個人の側から見て、企業の雇用状況を総合的に把握するために毎月、総務省統計局が作成している「労働力調査」でこの完全失業率が明らかになります。
完全失業率は、景気の動きに遅れてデータの変化が認められる傾向があります。景気悪化を受けた企業は即刻雇用者を失業に追い込むということは一般的ではありません。その前に、諸経費の圧縮や賃金引上げの抑制から手をつけるのが普通です。したがって、景気が悪化し始めてから大分経ってから失業率が上昇し始めるのが一般的です。特にわが国ではその傾向が強いと見られています。
3.消費者物価指数
消費者の手に渡る段階でのモノ、サービス価格の総合的な水準を示します。一般に用いられるのは、天候などの影響を受けやすい生鮮品を除いた全国ベースでの指数です。2007年6月現在では2005年現在での物価を100として指数化された数値が用いられています。一般には前年同月比の動きとして示されるのが普通です。つまり「1年前に比べて平均的にはどれだけ物価が上下したか」を示すのです。
どんな意味があるの
たとえば1年前に比べて賃金が2%上がっても、物価が3%上がれば、実質的には暮しは苦しくなったといえます。同様に、預貯金金利が0.1%でも物価が1%下がっていれば、実質的にその預貯金に預けたお金の価値は上がったことになります。消費者物価の動きは、我々が使えるお金の価値が実質的にどの程度変化したかを判断するための基準となるべき指標だと言えます。
基本的な調査プロセスは、まず家計調査(前出)に基づき家計の消費支出の構成を基準にして重要な品目を選定します。次に、これらの品目について小売店の段階での平常の価格(特価やサービス価格は除く)を対象にして、各品目に加重をかけて指数を算出します。
前述の全国ベースの指数のほか、これが公表される1ヶ月前にはデータの収集、集計が容易な東京都区部のみの消費者物価指数が発表されます。経験的に言えば、全国の指数の動きを先見することが多いため、消費者物価の最先端の動きを見る場合にはこのデータも良く用いられます。