金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2018
先生のための金融教育セミナー
「新学習指導要領の下での金融教育」
講 師
玉川大学教育学部
樋口 雅夫 教授
新学習指導要領がすべての学校段階で公示されましたが、その中で目指しているのは「社会に開かれた教育課程」、つまり学校教育を学校の中だけで閉じたものにするのではなく、社会と一緒になって子どもたちを育てていくことです。今の社会は我々の想像を超えるスピードで変化しており、10年後の社会がどのようになっているかを見通すことは難しい状況です。子どもたちはその中を生き抜いていかなければなりません。大人にも見通すことができないこれからの社会をより良いものにしていく、持続可能なものにしていくことが子どもたちに求められているわけです。さらに金融教育に関しては、成年年齢が18歳に引き下げられることを抜きにしては語れず、18歳の段階で子どもたちにどのような力が身に付いているのか、何ができるようになっているのかということが一層問われることになります。
高等学校で新たに設置された「公共」では、金融を扱う場合に「起業のための資金はどのようにすれば確保できるのか」などの具体的な問いを立て、その問いを追究しながら経済社会における金融の意義・役割を理解させていくという学びになっています。そうした学びの中で、子どもたちが金融には社会を豊かに発展させる役割があることに気づき、自分と社会の繋がりを理解できれば、「金融を通して社会を作り、その社会の中で自分の人生を豊かにしていこう」という思いに立てると思います。ただ、このような学びを高等学校だけで行うことが可能かというと難しく、小学校の段階からの確実な蓄積があってこそ実現できるものです。カリキュラムマネジメントの観点から他教科との連携も課題になっていますが、小学校から高等学校までの間で金融教育をいかに系統立てて行うかという点も重要です。
主体的・対話的で深い学びが求められている中で、グループ学習を取り入れることは有効だと思います。自分一人で考え出した知恵と、クラスメイトと議論しながら出てきた知恵とでは、どちらがより深まりがあるでしょうか。議論がうまく進まないときは、先生方が少しアドバイスを加えてあげることで解決するだろうと思います。内容については専門家の知見を借りることも検討していただければと思います。昨年まで国立教育政策研究所で関わってきた北海道の高等学校の実践では、グループ学習のサイクルを次のようにまとめました。まずは調べ学習や教師のレクチャーを通して情報をインプットする、そこから自分なりの意見を出してみたり、討論して意見を再整理したりしたうえで、発信、行動する、このサイクルを繰り返しながらより高い次元を目指す。18歳の成年になったときに子どもたちが必要な力を身に付けているための手法の一つとして、このような方法も挙げさせていただきたいと思います。
基調講演の模様
講師プロフィール
広島経済大学講師、文部科学省初等中等教育局教科調査官・国立 教育政策研究所教育課程調査官を経て現職。『金融教育プログラム』 全面改訂版、中学生用金融教育教材の作成に協力。
- 主催:金融広報中央委員会、大分県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、大分県、大分市、大分県教育委員会、大分市教育委員会、大分県小学校長会、大分県中学校長会、大分県立学校長協会