金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2018
先生のための金融教育セミナー
「会社を作ってみよう」
(中学校3年、社会)
講 師
江東区立第二亀戸中学校
仲村 秀樹 非常勤講師
【進行・コメント】 玉川大学教育学部 樋口 雅夫 教授
<実践発表>
この実践は、「良い企業とはどのような企業か」という問いかけから始まります。子どもたちからは「儲かる会社」といった答えが返ってきます。果たして本当にそうだろうかと考えてもらい、個人や企業の経済活動における役割と責任、起業、金融の働き、社会生活における職業の意義と役割、さらには労働保護立法、消費者の権利等を教えていくことが狙いです。金融広報中央委員会の『金融教育プログラム』にもこの実践を掲載していますが、学習指導要領の改訂や世の中の動きに合わせ、20年以上かけて逐次バージョンアップしています。
実践にあたり、事前の準備として保護者にご協力いただき、「会社に関するインタビュー」を行います。その際、各家庭のプライバシーにも配慮します。身近な方が働いている会社の目的や仕事内容、会社の経営に必要なもの、その会社が社会にどのようなサービスを提供しているのか等を子どもたちがインタビューし、それを通して自分が設立してみたい会社について考えます。
1時間目でどういう会社を作るかの構想を練り、2時間目以降で会社の設立計画書を作成していきます。子どもたちは世の中にある企業についてそれほど多くのことを知らないので、考えるきっかけとなるよう、よく知られている会社のホームページやパンフレットを見せたり、ニュースで取り上げられている話題を出したりします。会社の設立計画書には、事業内容のほか、キャッチフレーズや必要な資金とその調達方法なども記載します。ここで子どもたちは、株式会社の仕組み、直接金融・間接金融などに触れることになります。求人広告には、賃金や勤務地、勤務条件などを記載します。そして、プレゼンテーションです。ポスターセッション(屋台村形式)で投資家向け、求職者向けのプレゼンテーションと投票を行います。
グループによって求職者が多く集まるところ、投資家が多く集まるところなどの差が出ます。それはなぜだろう、と理由を検討していくことで、企業は利益を追求しているだけでなく、人々が必要とする安全で安心な財やサービスを提供していること、雇用の安定等の責任を果たしていること、環境への配慮や社会貢献に関する活動を行っていることなどを理解することができます。さらに、企業評価レポートを作成して発表することにより、文字言語、音声言語による表現活動を通して子どもたちの表現力を育成することもできると考えて取り組んでいます。
<ワークショップ>
参加者には、「会社を作ってみよう」の実践を体験していただきました。グループごとに、作ってみたい会社を考え、協力しながら会社設立計画書や求人広告、ポスターを作り、屋台村形式で発表しました。一人でも多くの投資者や求職者を募るために各グループが熱を帯びたプレゼンテーションを行い、この実践の狙いや手法を十分に理解出来たワークショップとなりました。
<コメント>
樋口雅夫先生より、次のようなコメントがありました。
この「会社を作ってみよう」の実践は、仲村先生が長い時間をかけて作り上げてこられたもので、様々な手法を駆使し、細かな配慮をされていることがよくわかる内容でした。今日ご用意いただいた資料は授業ですぐに活用できるものだと思いますし、屋台村形式の発表会は、他の教科や内容でも取り入れてみようと思われた先生もいらっしゃると思います。新学習指導要領では、各教科等で見方・考え方を働かせて課題を追究したり解決したりする活動を行うと示されています。仲村先生の実践ではこれらが自然に行えるように工夫されていました。今日のワークショップでも、仲村先生は実際の求人広告を資料として用意されていましたが、このように現実の教材、社会生活の中から参考となるものを準備するという点も大切な配慮だと思います。
金融とは、社会生活の中で大変重要なものである一方、抽象的で、子どもたちに「これが金融です」と見せることが難しく、目に見えない概念をどう扱うかというところが金融教育の難しさだと思います。今日のワークショップのように具体的な条件を設定したシミュレーションや学習活動を行うことで、たとえば資金が足りない場合はどうすればいいかを子どもたちが考え、そこから工夫が生まれ、最終的に金融の働きへの理解に繋げていけるのではないかと思います。仲村先生は、こうした実践を20年以上も前から行っておられたということで、本日の内容をぜひ参考にしていただければと思います。
実践発表・ワークショップ2の模様
- 主催:金融広報中央委員会、大分県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、大分県、大分市、大分県教育委員会、大分市教育委員会、大分県小学校長会、大分県中学校長会、大分県立学校長協会