金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
5.小学校における金融教育
(1)考え方と進め方
<1>小学校における金融教育の考え方と目標
小学校での金融教育は、家庭での教育や躾や、幼稚園や保育所での教育や保育を踏まえて実施される。総合的な学習の時間を活用して金融教育を実施する場合を除いて、金融教育のための特別な時間が用意されているわけではない。金融教育は、特に関連している教科、道徳、特別活動を中心に、全教育活動を通じて推進するものである。
小学校における金融教育は、言うまでもなく中学校に継続、発展していく。小学校の教師は子供たちが進学していく中学校での金融教育の内容についても理解し、関連を図った指導を行うことが重要である。
小学校の金融教育においては、例えば次のような目標が考えられる。これを踏まえて学年ごとの目標を設定することになる。
- 家庭や社会生活における消費、経済、貯蓄、労働など金融に関する活動に関心をもち、お金の役割や働くことの意味についての基礎的な知識や技能を身に付けるとともに、望ましい消費生活や自己の将来設計のあり方を将来にわたって考えようとする意欲と能力と態度の基礎を養う。
<2>小学生の発達特性と金融教育
小学生の時期の子供たちは、お金を使って買い物をしたりサービスを受けたりした経験をしているものの、お金のもっている意味やお金の得方などについては必ずしも十分に理解していない。もっている知識もばらばらの状態で、体系化されたものにはなっていない。またお年玉などを預貯金した経験は多くの子供たちがしているものの、それらのお金がどこでどのように活用されているのかについての知識はほとんどもちえていない。
小学生の時期は成長や発達が著しく、低学年、中学年、高学年の発達特性を踏まえ、それぞれの発達段階や発達課題に即した系統的な指導が重要になる。その際、子供たちはお金にかかわって徐々に経験や体験、知識や技能を身に付けるとともに、教科等においてもお金や金融、働くことの意味など金融教育にかかわる内容について学習を積み重ねていることに配慮しつつ、それらとの関連を十分に図りながら実践することが求められる。
<3>教科等における金融教育の進め方
小学校においては、教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間から構成されており、金融教育と指導内容面で深くかかわっている教科等と、教材や題材、学習活動等のレベルでかかわりをもたせることができる教科等がある。それぞれの教科等には、固有の目標や内容が定められており、実際の指導場面においては、総合的な学習の時間を除いて、指導の過程に「金融教育の視点」を位置付けて実践することが実際的である。総合的な学習の時間においては、目標や内容も含めて金融教育を重点的に実施することが可能である。
小学校において、特にかかわりの深い教科等は、社会、生活、家庭科、道徳、特別活動(学級活動や学校行事)、それに総合的な学習の時間である。これらの教科等においては、指導の目標や内容において金融教育とかかわらせながら指導することが可能である。一方、国語や算数、図画工作などの教科では、教材や題材、学習活動などの面で金融教育の視点を位置付けて実践することができる。
小学校の教師は原則として全教科を指導しており、各教科の学習で身に付けたお金や金融に関する内容等を相互に関連付けながら、小学校としての総合的な理解と関心を深めるようにしたい。総合的な学習の時間に金融教育を課題として取り上げ、教科等で身に付けたこととの関連を図りながら総合的に学習する場を設けることが極めて重要な意味をもっている。そこでは、お金や金融についての理解や関心を促すための体験的な学習や問題解決的な学習が一層ダイナミックに展開できる。