金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
5.小学校における金融教育
(2)学習指導の工夫
<1>教材化の工夫
金融や経済の仕組みにかかわる素材は小学校の児童にとって、抽象的で複雑であるものが多い。そこで、複雑で抽象的な素材を、単純で具体的な教材に置き換える必要がある。その際、児童の発達段階を踏まえながら次の事項に留意することが大切である。
児童は実際の経済についての知識はほとんどないので、既有の経験をできるだけ生かすようにしたい。例えば、保護者とともに買い物に出かけた経験や、自分のこづかいで買い物をした経験、お年玉を貯金した経験などをもとに教材化を図りたい。また、日常、児童が見聞するテレビニュースやコマーシャル等の情報も、教材化する際の有力な手掛かりとなる。
<2>学習活動の工夫
前述したように、金融教育にかかわる教材はとかく児童にとって実感しにくい。もし教師主導型の授業を進めた場合には、学級内で理解しにくい児童も表出する。できるだけ学習活動を工夫して実感的に理解させたい。
例えば、実際に家庭で依頼された買い物をするために商店に出かけてみるとか、金融機関に自分のこづかいを預貯金してみるとか、実際のお金の流れを身をもって体験することで、児童は貨幣の価値や役割、機能、扱い方などを学ぶことができる。
あるいは、学級や学年全体でお店やさんごっこのような活動を展開し、児童が実際に原料の仕入れ、品物の制作、値段の設定、販売活動、売上金の計算、利益高の算出などの活動を通して、経済の基礎を学ぶ活動も想定できる。その際、広告、店の家賃などを設定するなどして、より現実の世界に近づければ高学年児童にも適した学習活動とすることができる。
なお、金融教育での調べ学習では、各企業発行のパンフレットや新聞記事などでは、児童が読み取れないことが多い。したがって、調べ学習用の小学生向け資料を購入したり、各企業や自治体が子供向けに発行した資料類を準備しておくことが肝要である。
<3>発表や表現活動などの工夫
金融教育にかかわる用語は児童にとって、日頃馴染みのうすいものが多い。したがって、作品をつくる際には他の児童が理解できるような用語を使用するように指導することが大切である。それは、発表などの活動でも同様である。
しかし、児童は、言葉をやさしくしようとしてもとまどうことも多い。時には、教師が概念をかみ砕いて、児童が分かりやすい言葉に置き換えてやることも必要である。
小学校における金融教育の実践はまだ緒についたばかりであり、指導する際の用語の置き換えもこれからの課題である。「金融」や「市場」という言葉一つをとっても、小学校の児童に分かり やすく説明するには、どのような用語がよいか検討が必要である。
友人の発表を見聞して理解できなかったら、児童は学習内容に対して意欲や関心をもつことができない。分かりやすくできるかどうか、教師の工夫が期待される。