金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2018
先生のための金融教育セミナー
「アントレプレナーシップにおける金融教育
~東和中学校のアントレプレナーシップの実践報告~」
(中学校2年、総合的な学習の時間)
講 師
周防大島町立東和中学校
西村 仁明 教諭
【進行・コメント】 玉川大学教育学部 樋口 雅夫 教授
<実践発表>
「アントレプレナーシップ」の実践は、起業家のあり方(起業家精神)を学びながら、様々な問題を解決していくプログラムです。本校では、2012年からこのプログラムに取り組んできました。実際の販売実習を通して、起業のための資金確保や会社経営の仕組みについて学び、精神的にも経済的にも自立した若者を育成することをねらいとしています。
この実践は、オリエンテーション、市場調査、経営戦略の考案、必要資金の算出、株主募集集会、仕入れ、販売実習、会計監査、株主総会という流れで行います。販売実習は、本校の近くにある道の駅で行いますので、まずは道の駅で市場調査を行います。どのエリアからお客さんが来ているか、年齢層はどうか、どのような商品やサービスを必要としているかなどを調べます。その調査結果を基に、経営戦略を考え、必要な資金額を算出し、株を販売することでその資金をまかなうという形です。必要な資金を得るために、株主募集集会で保護者や地域の方々に向けて、子どもたちがプレゼンテーションを行います。必要株数を1株500円で販売して資金を集めますが、同時に子どもたちは大きな責任も負うことになります。
プレゼンテーション能力を高めるために、スモールステップで細かく発表する機会を設け、伝える力、表現力を身に付けられるようにしています。本校は中高一貫校なので高校と連携し、高校生に発表してアドバイスをもらう機会を持ったり、地元で活躍している方を講演会に招いたりします。同時に、必要資金を計算するために、子どもたちは自分で会社に問い合わせてみたり、直接お店に行って交渉したりすることも行います。こうして、最終的に、株主募集集会で「こういうことをするので、株を買ってください」とプレゼンテーションを行います。
こうした活動は、毎年継続して行うことが大切だと考えています。本校はコミュニティ・スクール実践校でもあり、この実践においても、本スクールのキャリア教育デザイナーの方にアドバイザーとなって頂いています。公立の学校では教員の人事異動がありますが、この仕組みにより、毎年同様の内容で実践ができています。
「アントレプレナーシップ」の実践を通じて、子どもたちのチャレンジ精神、プレゼンテーション能力が高まったと感じています。気を付けている点としては、単なる「お店屋さんごっこにならないようにする」という点です。そのために、資金確保から販売実習、決算までの流れの中での指導計画を明確にし、生徒にどのような力を身に付けさせたいかを教員の共通理解としています。
<ワークショップ>
ワークショップでは、グループに分かれて、経営戦略の立案と株主募集のためのプレゼンテーションを行いました。地元の特産品を活かした物品販売の企画をするグループと、小学生からお年寄りまで幅広く喜んでもらえるイベントを企画するグループに分かれて案を練り、必要資金や想定される利益、株主に還元できる金額を算出して、プレゼンテーションに臨みました。参加者から「キャリア教育デザイナーのサポートを受けているという話があったが、そのほかにどのような方が関わられているのかもう少し知りたい」というコメントがあり、西村先生は「地元の企業の方のほかに、本校のOB・OGの方々、退職された元本校の教員の方々、保護者の方々にサポートして頂いています。地域をあげて子どもを育てるということが大事だと考えています」と述べられました。
<コメント>
樋口雅夫先生より、次のようなコメントがありました。
西村先生が発表の中で仰っていたとおり、このような教育は、教師や地域が変わっても継続して実践できる持続可能性が大切です。そして、そのためのヒントも西村先生の発表にありました。この実践は、金融教育を介したカリキュラムマネジメントの素晴らしい事例だと思います。地域の課題を解決する取り組みですので、当然、地域の方とつながることができます。さらに、カリキュラムマネジメントの視点であるPDCAサイクルをしっかりと回していくという点が入っていました。株式やお金を実際に扱うことで子どもたちはそれらを自分のこととして捉えられるようになり、地域の方々からの忌憚のない意見を反映することで、経営戦略をよりよいプランにしていく、そして、行動を起こし、その結果を振り返ってチェックし、次につなげていくというアクションが行われていました。地域の専門家を味方に巻き込むことで、よりよい教育を持続可能としている例を西村先生にお示し頂いたと思います。
実践発表・ワークショップ2の模様
- 主催:金融広報中央委員会、山梨県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、山梨県、甲府市、山梨県教育委員会、甲府市教育委員会、山梨県公立小中学校長会、山梨県高等学校長協会