金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2018
先生のための金融教育セミナー
「新学習指導要領の下での金融教育」
講 師
玉川大学教育学部
樋口 雅夫 教授
新学習指導要領がすべての学校段階で公示されました。その中で目指しているのは「社会に開かれた教育課程」、つまり学校教育を学校の中だけで閉じたものにするのではなく、社会と一緒になって子どもたちを育てていくことです。社会は我々の想像を超えるスピードで変化しており、子どもたちはその中を生き抜いていかなければなりません。さらに金融教育に関しては、成年年齢が2022年に18歳に引き下げられることを抜きにしては語れません。18歳の段階で子どもたちにどのような力が身に付いているのか、何ができるようになっているのかということが一層問われることになります。2022年はまだ先のことのようですが、その年に18歳になる子どもが今いくつなのか、そう考えると中学校の先生方にも他人事ではないことに気づいて頂けると思います。
高等学校で新たに設置された「公共」では、金融を扱う場合に、知識を順に教えていくことをメインにするのではなく、「起業のための資金はどのようにすれば確保できるのか」などの具体的な問いを立て、その問いを追究しながら経済社会における金融の意義・役割を理解させていくという学びになっています。そうした学びの中で、子どもたちが金融には社会を豊かに発展させる役割があることに気づき、自分と社会の繋がりを理解し、具体的な知識と身近な出来事を結び付けて自分のこととして考えられるようになる、これこそが今求められていることだと思います。ただ、このような学びを高等学校だけで行うことが可能かというと難しく、小学校の段階からの確実な蓄積があってこそ実現できるものです。他教科との連携という視点だけでなく、小学校、中学校、高等学校でいかに連携できるかが重要だと思います。
近年、フィンテック、人工知能などといった技術を使った革新的な金融サービスを提供する動きが多く見られ、支払方法も多様化しています。新学習指導要領の中で求められているのは、先生方がフィンテックについて専門的な知識を持ち、子どもたちにその仕組みを理解させることではありません。今、社会がこのように変化していることを、子どもたちに実感を持って考えさせることが求められています。今後、子どもたちが社会に出て、一つの会社に勤め、そのまま一生を終えるケースは、イレギュラーになっていくであろうと思います。今ある仕事も人工知能の発達によってなくなるかもしれません。これからの社会において、子どもたちが自立した主体となって他者と協働してより良い社会を形成する力を、金融教育を通してどう育むか、本日の実践事例を通して考えて頂き、ご自身の学校に持ち帰って頂ければと思います。
基調講演の模様
講師プロフィール
広島経済大学講師、文部科学省初等中等教育局教科調査官・国立 教育政策研究所教育課程調査官を経て現職。『金融教育プログラム』 全面改訂版、中学生用金融教育教材の作成に協力。
- 主催:金融広報中央委員会、山梨県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、山梨県、甲府市、山梨県教育委員会、甲府市教育委員会、山梨県公立小中学校長会、山梨県高等学校長協会