金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2017
先生のための金融教育セミナー



「『これであなたもひとり立ち』指導用電子教材を使った金融教育の進め方」
『これであなたもひとり立ち』執筆者 池山純子 氏
【進行・コメント】
文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官
国立教育政策研究所教育課程研究センター 研究開発部 教育課程調査官
樋口 雅夫 氏
<実践発表>
私は新潟の県立高校で家庭科の教師を38年間勤めました。金融広報中央委員会の教材『これであなたもひとり立ち』の作成に執筆者の一人として関わり、また、その教材の電子版の作成にも携わっております。
今の高校生の実態を見ると、大きな変化は、選挙権をもつ高校生が出てきたということではないでしょうか。消費者教育支援センターと生命保険文化センターが行った「平成28年度高校生の消費生活と生活設計に関するアンケート調査」によれば、スマホ等の利用目的はほとんどSNSということで、家族や友人と話をする時間が減っています。また、契約成立に関する正誤問題では正答率が3割にとどまり、成年年齢引き下げに伴って、消費者トラブルの深刻化が懸念されるという報告が出ております。
本日は、『これであなたもひとり立ち』の電子教材のコンセプトを、実際に教材に触って頂きながら、学習を進めていきたいと思います。
たとえば、クレジットカードの使い方の基本を学ぶ教材では、1万円を1年間定期預金に預けた場合にもらえる利息と、1万円をカードでキャッシングした場合に1年後に支払わなければならない利息の差がどれだけ大きいかなど、クイズ形式で生徒が楽しみながら実感することができます。一人暮らしの生活費を考え、収支の合った生活を送るためのシミュレーションをするエクセル教材もあります。金額を入力すると自動で計算されるため、効率よく学習することができ、アルバイトの地域別平均額や奨学金を借りる場合の貸与月額等は資料のシートを参照しながら生徒が自分で学習を進めることができます。
授業づくりにおいては、社会情勢と生徒の実態を把握することが重要です。今の世の中は非常に速いスピードで変化しており、教師より生徒の方が先に新しいツールなどを経験していることもあるわけですが、教師もそうした情報収集に努めることが大切です。家庭科の強みは実習ができるということですが、最近は授業時間数が少なく、実習の時間を確保することも大変です。電子教材を活用し、生徒がシミュレーションを通して学び、そこから親子や友達との対話につながり、学んだことの理解がより深まればと思います。
<ワークショップ>
実践発表で紹介した電子教材を実際に体験し、電子教材の改善点や自校の実態にあった活用の仕方などについてグループで話し合いました。
「資料が充実しているため、公立大学の授業料などを生徒がひとつひとつ調べなくてもよく、効率よく学習できる点が良い」、「操作方法が簡単で、教師や生徒にエクセルの知識がなくても学習できる点が良い」といった感想が聞かれたほか、「金額を基にした帯グラフが出ると視覚的によりわかりやすくなるのではないか」、「進路確定後の余裕のある時間の方がより有効に活用できるのではないか」など様々なコメントが聞かれました。
<コメント>
樋口先生より次のようなコメントがありました。
池山先生のお話を伺って、家庭科の学習の重要性という当たり前のことに改めて気づかされるとともに、高等学校の家庭科でここまでのレベルのことをしているのだと感じさせられました。ひとり立ち、自立した消費者に向けての学習は、高校3年生になってからではなく1年生あるいは2年生からやっておくと、3年生になって具体的に自分の将来を考えるときに活かせると思います。併せてカリキュラムマネジメントの視点から、家庭科だけでなく、特別活動のロングホームルームの時間などを使い、今日紹介のあった電子教材などを活用しながら、すべての先生が関わる形で進めていくことも考えて頂ければと思います。

実践発表・ワークショップ3の模様
- 主催:
- 金融広報中央委員会、長崎県金融広報委員会
- 後援:
- 文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、長崎県、長崎市、長崎県教育委員会、長崎市教育委員会、長崎県小学校長会、長崎県中学校長会、長崎県高等学校長協会