金融教育フェスタ
金融教育フェスタ2019
先生のための金融教育セミナー


「新学習指導要領の下での金融教育」
講 師
玉川大学教育学部
樋口 雅夫 教授
いよいよ小学校では2020年4月から新学習指導要領が全面実施となり、先生方も準備に余念がないところかと思います。今回の学習指導要領の改訂は、2020年代、2030年代という先を見通しながら、子どもたちにどのような力を身に付けさせたいか、子どもたちが幸せな人生を送るために何を学ぶべきかを何年にも亘り議論してなされたものです。
とりわけ先生方の関心の高いところでは、2022年からの成年年齢引下げがあると思います。高等学校在学中に成人となる子どもたちに、学校教育で何をどこまで教えるべきなのかが大きな課題ですが、先生方がそのすべてに対応できなければいけないということではありません。社会と連携・協働しながら未来の創り手を育てる「社会に開かれた教育課程」の実現が目指されています。たとえば、専門知識が必要な部分は、銀行、企業、行政の方といった地域の専門家の力を借りる、一方で教育の専門家である先生方が主体的・対話的で深い学びを子どもたちに身に付けさせるというように社会と協働することで、幸せな人生を送るための力を育むことができるのではないかと思います。
新学習指導要領では高等学校公民科の必修科目として、「公共」が設置されています。この科目は高校2年生までに学びます。つまり、18歳で成人するまでに学び終えるものであり、この学習内容、学習方法を身に付けていることが、学校教育の最終形として求められていると言えると思います。たとえば契約によって生じる権利や責任について教える場合も、成年年齢が引き下げられることによって、これまで以上に自分自身で判断し、自分自身でより良い生活を営んでいく自覚を持たせる必要が出てきたと言えます。
出口の話を先に申しましたが、子どもたちを出口に導くためには、入り口である小学校段階からの各教科等での系統的な学びが必要です。新学習指導要領における金融や消費生活等の記載について、小学校の家庭科では、「買物の仕組みや消費者の役割が分かり、物やお金の大切さと計画的な使い方を理解する」とあります。また社会科では、「販売の仕事は、消費者の多様な願いを踏まえ売り上げを高めるよう、工夫して行われている」ことも学びます。中学校では、クレジットなどの三者間契約、電子マネーのような見えないお金を計画的に使うこと、経済活動や起業などを支える金融などの働きについて取り扱います。これらは、新たな発想や構想に基づいて財・サービスを創造する必要性が今後一層生じてくる中で、子どもたちの人生の選択肢を増やしていくための学びである、自由な発想で自分の人生と社会全体をより良くする、持続可能な社会にしていくための学びであるとご理解いただけたらと思います。
金融教育というと難しく聞こえるかもしれませんが、法教育も消費者教育も金融教育とつながっています。学習指導要領が変わったことを一つのきっかけとして、どうすれば子どもたちにもっと面白い、もっと役に立つ教育ができるのかということを考えていただき、本日の実践発表をご覧いただければと思います。

基調講演の模様
講師プロフィール
広島経済大学講師、文部科学省初等中等教育局教科調査官・国立教育政策研究所教育課程調査官を経て現職。『金融教育プログラム』 全面改訂版、中学生用金融教育教材の作成に協力。
- 主催:金融広報中央委員会、鳥取県金融広報委員会
- 後援:文部科学省、金融庁、消費者庁、日本銀行、日本PTA全国協議会、鳥取県、鳥取市、米子市、 鳥取県教育委員会、鳥取市教育委員会、米子市教育委員会、鳥取県小学校長会、鳥取県中学校長会、鳥取県高等学校長協会