暮らしとおかねの身近な法律
1.暮らしとおかねの身近な法律(契約)Q&A
Q1-1.夫に代金支払義務はあるか?<夫婦の法律行為>
妻が夫に内緒で、高価な(200万円くらい)毛皮のコートを、夫名義で買いました。夫は代金の支払義務を負うのでしょうか?
A1-1.夫は、原則として代金支払義務を負いません。ただし、例外的に代金支払義務を負うこともありますので注意して下さい。
夫と妻は別人格ですから、夫婦だからといって夫が妻の債務を当然に負うわけではありません。本件の場合、妻が夫の名義で勝手にコートを買った行為は無権代理行為(実際は代理権がないのに、代理人のふりをして法律行為をすること)となって、原則としてその効果は夫には及びません。つまり夫はコートの代金支払義務を負わないことになります。
ただし夫婦の場合は、日常の家事に関するものであれば夫婦が連帯して責任を負うことになっているので(民法第761条)、たとえ無権代理行為であっても、取引の相手方にその行為が夫婦の日常家事に関する取引だと思われても無理はないと思われる場合には、夫もまた妻と共に代金支払義務を負うことになります(判例)。
日常の家事に関する法律行為とは、日用品の購入や保険、医療、教育上の契約などの他、夫婦の共同生活に必要な範囲で借金をすることも含まれます。
本件は一応200万円もする毛皮ですから日常家事に当たらず連帯責任はないと考えてよいでしょう。
民法第761条[日常の家事に関する債務の連帯責任]
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。