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やさしいデリバティブ

3 オプション取引

3-4 オプション取引の損益

オプション取引の買い手の立場

オプションの“買い手”は当初、オプション・プレミアムを支払って、オプションを購入すれば、その後、自分の得になる行動だけをすればよいですから、損失はプレミアムまでに限定されます。

オプション・プレミアム

オプション取引では、コールオプションでもプットオプションでも、買い手は損失が限定されているため、証拠金の払い込みは必要ありません。

コールオプションとプットオプション

オプション取引の売り手の立場

オプションの“売り手”は、当初プレミアムを受け取ることができますが、取引相手(買い手)が得する状況になったときには、その権利行使に応じなければならないので、損失を負い、かつそれが無限に大きくなる可能性があります。

保険のしくみに例えると、売り手は保険会社の立場に似ています。売り手には、行使する「権利」ではなく、権利行使に応じる「義務」が発生しますので、リスクが大きいことを認識しておかなければなりません。

そうしたリスクの大きさを踏まえ、売り手は、取引当初に証拠金を払い込む必要があります。

コールオプションの売りの場合

コールオプションの売りであれば、行使価格で買うか否かを選べる権利を相手に与えることになります。

市場価格が権利行使価格を上回った場合

買い手は、市場価格より安く買えるため、「行使価格で買う権利」を行使します。

この場合、権利を与えた立場の売り手は、市場価格より安く売らなければならないため、損をすることになりますが、買い手の権利行使に必ず応じなければなりません。

市場価格が権利行使価格を下回った場合

買い手は「行使価格で買う権利」を放棄するため、売買が行われることはありません(売り手はプレミアムを受け取るのみです)。

プットオプションの売りの場合

プットオプションの売りの場合も同様に、行使価格で売るか否かを選べる権利を相手に与えることになります。

市場価格が権利行使価格を下回った場合

買い手は、市場価格よりも高く売れるため、「行使価格で売る権利」を行使します。

この場合、権利を与えた立場の売り手は、市場価格より高く買わなければならないため、損をすることになりますが、買い手の権利行使に必ず応じなければなりません。

市場価格が権利行使価格を上回った場合

買い手は「行使価格で売る権利」を放棄するため、売買が行われることはありません(売り手はプレミアムを受け取るのみです)。

各オプションの買い手・売り手の双方の損益

次に、各オプションの買い手・売り手の双方について、その損益を詳しく見ていくことにします。

初めは難しく感じられるかもしれませんが、イメージ図やグラフ、表を何回か見ていくうちに、きっとわかってきます。

下記説明のイメージ図

以下では、A子さんがB男君を相手に、オプションを購入します。行使価格は1,000円、プレミアムは100円とします。

コールオプション

コールオプションの買い手

下記説明のイメージ図

A子さんは、原資産(例えば金)が値上がりすると読み、B男君からコールオプション(=原資産を買う権利)を買いました。

下記説明のイメージ図

そしてその後、予想どおり原資産の市場価格は1,200円と行使価格(1,000円)より高くなりました。

そこで、A子さんは買う権利を行使してB男君から行使価格の1,000円で原資産を買い、それを市場(1,200円)で売却しました。この場合、A子さんは、200円の差益が稼げ、プレミアムの支払い(100円)を差し引いても以下のとおり利益が得られます。

  • 買い手の損益 = 原資産の市場価格 - 行使価格 - プレミアム
  • (100円)  (売値=1,200円) (買値=1,000円) (100円)

そしてこの利益は、原資産が値上がりするほど大きくなります。

下記説明のイメージ図

一方、予想に反して原資産の市場価格が950円に値下がりし、行使価格(1,000円)よりも低くなってしまうと、A子さんはB男君から原資産を行使価格の1,000円で買っても950円でしか売れず、もうけられないので買う権利を放棄します。

この場合は、当初支払ったプレミアムの100円が損失となります(損失は、それ以上は増えません)。

原資産の市場価格>行使価格

権利行使する
(損益 = 原資産の市場価格 - 行使価格 - プレミアム)



原資産の市場価格≦行使価格

権利放棄する
(損失はプレミアム金額まで)


注)原資産の市場価格=行使価格のとき、買い手は権利行使してもしなくてもよいのですが、実際の行使には手数料等の費用がかかることから、一般的に権利を放棄します。したがって、この場合も権利放棄としています。

コールオプションの売り手

下記説明のイメージ図

コールオプションの売り手のB男君にとっては、これらが正反対になります。

下記説明のイメージ図

まず、原資産の市場価格が1,200円と、行使価格(1,000円)より高くなれば、相手のA子さんはB男君から原資産を1,000円で買う権利を行使しますので、これに応じざるを得ません。

この場合、原資産を市場価格の1,200円で調達し、それより安い行使価格(1,000円)でA子さんに売ることを余儀なくされるので、200円の逆鞘が発生します。プレミアムの受け取り(100円)がありますが、以下のとおり損失が発生します。

  • 売り手の損益 = 行使価格 - 原資産の市場価格 + プレミアム
  • (▲100円) (売値=1,000円)   (買値=1,200円) (100円)

この損失は、原資産の市場価格が上がるほど多額となり、その上限もない点に十分注意する必要があります。

下記説明のイメージ図

一方、原資産の市場価格が950円と、行使価格(1,000円)より低くなれば、A子さんは1,000円で買う権利を放棄しますので、B男君にとっては当初受け取ったプレミアムの100円がそのまま利益になります。

原資産の市場価格>行使価格

権利行使される
(損益 = 行使価格 - 原資産の市場価格 + プレミアム)


原資産の市場価格≦行使価格

権利放棄される
(利益はプレミアム金額まで)



コールオプションの損益

グラフで見ると次のようになります。

行使価格1,000円、プレミアム100円の例

行使価格1,000円、プレミアム100円のコール・オプションの損益図

行使価格=1,000円で買う権利
買い手の損益
原資産の
市場価格
900 950 1000 1050 1100 1150 1200 1250
権利行使・放棄
による損益
(a)
権利放棄する 権利行使する
0 0 0 +50 +100 +150 +200 +250
プレミアム支払
(b)
-100 -100 -100 -100 -100 -100 -100 -100
最終的な損益
(a)+(b)
-100 -100 -100 -50 ±0 +50 +100 +150

行使価格=1,000円で売る義務
売り手の損益
原資産の
市場価格
900 950 1000 1050 1100 1150 1200 1250
相手の権利行使・放棄
による損益
(a)
権利放棄される 権利行使される
0 0 0 -50 -100 -150 -200 -250
プレミアム受取
(b)
+100 +100 +100 +100 +100 +100 +100 +100
最終的な損益
(a)+(b)
+100 +100 +100 +50 ±0 -50 -100 -150

プットオプション

プットオプションの買い手

下記説明のイメージ図

今度は、A子さんは原資産が値下がりすると読み、B男君からプットオプション(=原資産を売る権利)を買いました。

下記説明のイメージ図

すると、予想どおり原資産の市場価格が750円と、行使価格(1,000円)より低くなりました。

そこで、A子さんはB男君に売る権利を行使することにし、原資産を市場価格(750円)で調達して、より高い行使価格(1,000円)でB男君に売却しました。この場合、A子さんは、250円の差益を稼げ、プレミアムの支払い(100円)を差し引いても、以下のとおり利益が得られます。

  • 買い手の損益=行使価格-原資産の市場価格-プレミアム
  • (150円) (売値=1,000円) (買値=750円) (100円)

そしてこの利益は、原資産の市場価格が下がるほど大きくなります。

下記説明のイメージ図

一方、予想に反し原資産の市場価格が1,100円と、行使価格(1,000円)より高くなれば、A子さんは原資産を1,000円でB男君に売ることになり、1,100円で仕入れると逆鞘になるため、1,000円で売る権利は放棄をします。

その場合は、当初支払ったプレミアムの100円が損失になります(損失は、それ以上は増えません)。

原資産の市場価格<行使価格

権利行使する
(損益=行使価格-原資産の市場価格-プレミアム)



原資産の市場価格≧行使価格

権利放棄する
(損失はプレミアム金額まで)


注)原資産の市場価格=行使価格のとき、買い手は権利行使してもしなくてもよいのですが、実際の行使には手数料等の費用がかかることから、一般的に権利放棄します。したがって、この場合も権利放棄としています。

プットオプションの売り手

下記説明のイメージ図

プットオプションの売り手のB男君には、これらが逆になります。

下記説明のイメージ図

まず、原資産の市場価格が750円と、行使価格(1,000円)より低くなれば、相手のA子さんはB男君に1,000円で売る権利を行使してきますので、これに応じざるを得ません。

この場合、A子さんから原資産を高く(1,000円)買って市場に安く(750円)売ることを余儀なくされるため、下記のとおり損失が発生します。

  • 売り手の損益=原資産の市場価格-行使価格+プレミアム
  • (▲150円) (売値=750円)  (買値=1,000円)   (100円)

この損失は、原資産の市場価格が下がるほど多額となり、その上限もない点に十分注意する必要があります。

下記説明のイメージ図

一方、原資産の市場価格が1,100円と、行使価格(1,000円)より高くなれば、A子さんは1,000円で売る権利を放棄しますので、B男君にとっては当初受け取ったプレミアムがそのまま利益になります。

原資産の市場価格<行使価格

権利行使される
(損益=原資産の市場価格-行使価格+プレミアム)



原資産の市場価格≧行使価格

権利放棄される
(利益はプレミアム金額まで)


プットオプションの損益

グラフで見ると次のようになります。

行使価格1,000円、プレミアム100円の例

行使価格1,000円、プレミアム100円のプット・オプションの損益図

行使価格=1,000円で売る権利
買い手の損益
原資産の
市場価格
750 800 850 900 950 1000 1050 1100
権利行使・放棄
による損益
(a)
権利行使する 権利放棄する
+250 +200 +150 +100 +50 0 0 0
プレミアム支払
(b)
-100 -100 -100 -100 -100 -100 -100 -100
最終的な損益
(a)+(b)
+150 +100 +50 ±0 -50 -100 -100 -100

行使価格=1,000円で買う義務
売り手の損益
原資産の
市場価格
750 800 850 900 950 1000 1050 1100
権利行使・放棄
による損益
(a)
権利行使される 権利放棄される
-250 -200 -150 -100 -50 0 0 0
プレミアム受取
(b)
+100 +100 +100 +100 +100 +100 +100 +100
最終的な損益
(a)+(b)
-150 -100 -50 ±0 +50 +100 +100 +100

QUIZにチャレンジNo.3

ケンタくんは6ヵ月後に売買する○△社の株式のコールオプションを購入しました。行使価格5,000円のコールオプションのプレミアムは300円でした。6ヶ月後の株価の変化を想定して、ケンタくんの損益を考えてみましょう。

Q1.6ヶ月後の○△社の株式の市場価格は5,500円になりました。

Answer

Q2.6ヶ月後の○△社の株式の市場価格は4,500円になりました。

Answer

次のシミュレーションで試してみましょう。

オプション取引のシミュレーション

○△社の株式について、オプション取引の簡単なシミュレーションをしてみましょう。

1. いずれのオプション取引を行いますか?

コールオプションを買う。
コールオプションを売る。
プットオプションを買う。
プットオプションを売る。

2. 行使価格とオプションプレミアムを選びましょう。


行使価格 オプションプレミアム


3. 6ヶ月後、○△社の株式の市場価格がいくらになるか、入力してください(半角英数)。

6ヶ月後の市場価格
ランダムに発生させたい
場合にはボタンをクリック


4. このオプション取引によって発生する損益を計算します。 STARTボタンを押してください。



損益 円です。
【解説】


(注意) このシミュレーションではオプション取引の仕組みを理解するため、行使価格、プレミアム、6ヵ月後の市場価格を自由に設定できますが、実際の取引ではすべて市場動向に基づきます。また、取引手数料等を考慮していません。


つづく

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