やさしいデリバティブ
4 スワップ取引
4-1 スワップ取引とは
スワップとは、元来、等価値のものの「交換」という意味です。デリバティブのスワップ取引において交換するのは、将来にわたって発生する利息です。同じ通貨で異なるタイプの利息を交換するのが金利スワップです。また、異なる通貨の利息などを交換する通貨スワップ(*1)やクーポンスワップ(*2)もあります。
スワップ取引は将来の金利変動リスクを管理する手法として金融機関のあいだで急速に広まり、さらに企業の財務管理に用いられるなど、非常に重要な地位を確立しています。そして、その汎用性の高さから個人向け金融商品の中にも取り込まれるようになっています。
*1 通貨スワップ/異なる通貨間で将来の金利と元本を交換するのが通貨スワップです。ドル金利を受取って円金利を支払うといった具合のものです。たとえば、ドル建て債券を購入した場合、利息と償還元本がドル建てで行われますが、その場合、為替変動リスクがあります。通貨スワップを同時に行うことで、そっくりそのまま円建て債券投資をおこなった効果を生み出すことができます。
*2 クーポンスワップ/元本交換をしない通貨スワップのことです。将来にわたって異なる通貨の金利のみを交換します。
金利変動リスク?
金融機関からお金を借りるとき、預貯金をするとき、債券投資を行うとき…等、お金の貸し借りの世界には必ず金利が発生します。金利と一言で言ってもさまざまなものがあり、その水準もその国の経済環境によって常に上がったり下がったりと変動するものですから、リスクがあります。
たとえば銀行からお金を借りるときの借入金利を考えてみましょう。金利のタイプを大きく分けると固定金利と変動金利の2種類あります。固定金利建てで借入れた場合と変動金利建てで借入れた場合のリスクの違いは何でしょうか。
固定金利建て借入れ
〔特徴〕借入期間を通じて金利が一定です。将来金利が上昇しても、下落しても利払いの金額は変化しません。
〈固定金利建て借入れの金利リスク〉
将来、金利が低下しても高い利息を支払い続けなければなりません。
変動金利建て借入れ
〔特徴〕借入期間中に市場金利に合わせて金利を見直すため、最終的にどれだけの利息を支払うことになるかは将来の金利の動きに依存します。
〈変動金利建て借入れの金利リスク〉
将来、金利が上昇すればそれだけ利息の支払い負担が増えてしまいます。
将来の金利変動見通しによって、(1)金利が低下すると予想する場合は、固定金利建て借入れを変動金利建て借入れに変換し、(2)逆に金利が上昇すると見込まれる場合は、変動金利建て借入れを固定金利建て借入れに変換して、このような金利変動リスクに対処したいというニーズが生まれてくるのは当然です。
この金利リスクの管理というニーズに応えるのが金利スワップなのです。