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企業年金

第3部 年金を受け取るまでに中途退職や制度変更があった場合

第2章 企業年金を受け取るまでに制度変更があったらどうなるのでしょうか?

在職中に会社で加入していた企業年金が廃止されたり、新しい制度へ変更されることがあります。また、退職・転職後に前職で加入していた企業年金が廃止されたり、新たな企業年金へ変更されることもあります。その場合、自分が加入していた企業年金はどうなるのでしょうか?

1.在職中に企業年金が解散・廃止や変更になった場合

在職中に企業年金の制度が廃止されたり、新たな企業年金へ変更された場合は、企業年金の種類と従前の企業年金の年金資産を新しい制度に引き継ぐか否かによって違いがあります。

新たな企業年金へ移行する場合は、変更前の給付額と変更後の給付額が同水準にできない場合もあります。また、企業年金を解散や廃止するときに受け取る一時金の額も将来の年金等の給付に匹敵する一時金額を支給するのは難しい場合もあります。

企業年金が解散・廃止、変更された場合の給付額や一時金額も注意してみておきましょう。

(1)在職中に企業年金が解散・廃止になった場合

在職中に企業年金が廃止された場合は、基本的に廃止された企業年金に貯めてあった年金資産を加入者である社員に分配して制度は終わります。

しかし、税制適格退職年金や厚生年金基金は、給付に必要な年金資産が不足している「積立不足」となっている場合が多くありました。そのため、税制適格退職年金と厚生年金基金を廃止する場合は、この不足する年金資産をどうするかが問題となりました。

積立不足とは~(別ウィンドウで開きます)

年金をすでに受給している人を優先し、残った年金資産をまだ受給していない社員たちで分配して終わりにする会社や厚生年金基金もありました。また、廃止時点であった年金資産をその時点で分配し、不足分は退職時に支給する会社等もありました。

企業年金を廃止するには、社員への説明や同意が必要になります。自分が加入していた企業年金がどんな対応だったかはわかるはずです。しかし、もし、そうした際の説明等を忘れてしまったら、会社の人事部等へ問い合わせましょう。

図表3-2-1:在職中に企業年金が解散・廃止した場合の取り扱い
廃止前の企業年金 権利
税制適格退職年金
  • ➊(積立不足なし)廃止時点で年金資産を受け取る
  • ➋(積立不足あり)廃止時点で年金資産を受け取り、不足分を会社から退職時に受け取る
厚生年金基金
  • ➌2014(平成26)年3月以前の解散・廃止
    • 独自部分→社員の選択(年金資産を受け取る、もしくは連合会へ移換)
    • 代行部分→連合会へ移換
  • ➍2014(平成26)年4月以降の解散・廃止
    • 独自部分→社員の選択(年金資産を受け取る、もしくは連合会へ移換)
    • 代行部分→国へ移換
確定給付企業年金(DB) ➎廃止時点で年金資産を受け取る(※)
(※)本人の希望によっては個人型確定拠出年金へ移換可能
企業型確定拠出年金(DC) ➏個人型確定拠出年金へ移換

①税制適格退職年金(積立不足なし)

1962(昭和37)年から始まった税制適格退職年金は、法律により2012(平成24)年3月末で廃止されました。廃止時点ではほとんどの会社が積立不足でした。ただ、積立不足がない場合でも、新制度に変更せず、廃止時点で年金資産を社員が受け取って、制度を廃止することもありました。

積立不足がなく税制適格退職年金を廃止する場合、廃止時点の年金資産は会社が受け取ることはできず、一定のルールに基づき算出した金額が社員に分配されました。

②税制適格退職年金(積立不足あり)

上記①とは違い、積立不足がありながら、新しい制度に移行せず制度を廃止した場合は、廃止時点の年金資産を受け取ります。ただ、不足分の補てんは会社によりさまざまでした。経営状況から補てんができなかった会社や、一度に補てんできず社員がそれぞれ退職する時点で退職金として補てんする会社もありました。また、少数ですが、制度を廃止する時点で全額補てんする会社もありました。

③厚生年金基金

国は、2014(平成26)年から厚生年金基金が継続するための基準を引き上げたため、厚生年金基金の解散や移行が加速しました。厚生年金基金の解散、つまり厚生年金基金の制度の廃止は、時期により、厚生年金の代行部分(国に代わって基金が支給する厚生年金の一部)の取り扱いが違ってきます。

  • 厚生年金の代行部分

    2014(平成26)年3月31日以前に解散した基金にいた場合
    代行部分は企業年金連合会に年金資産を移換されていますので、企業年金連合会で手続きをして支給されます(代行部分以外の厚生年金の老齢給付は年金事務所で手続きをして支給されます)。
    2014(平成26)年4月1日以降に解散した基金にいた場合
    代行部分を含め、厚生年金の老齢給付は国(年金事務所)で手続きをして支給されます。
  • 独自給付部分

    解散した厚生年金基金に基金独自の給付部分の年金資産が残っていれば、加入者に分配されます。この個人に分配された年金資産は本人が一時金で受け取るか、企業年金連合会へ移換するか、あるいは個人型の確定拠出年金へ移換するかを決めます。一時金で受け取ると一時所得として課税の対象となりますが、連合会や個人型確定拠出年金へ移換するとその時点では課税はされません。

④確定給付企業年金(DB)

2002(平成14)年に始まった確定給付企業年金を廃止するには、国の許可が必要です(基金型は認可、規約型は承認)。他の制度への変更・移行なく廃止するには、会社が倒産したり、合併するなど、やむを得ない理由でなければ認められません。廃止が認められた場合は、年金資産が社員に分配されて制度は終了します。

また、この分配された年金資産は、社員本人の希望により、個人型確定拠出年金に移換することもできます。

⑤企業型確定拠出年金(DC)

企業型確定拠出年金も確定給付企業年金と同様、やむを得ない理由でなければ廃止することはできません。もし廃止が認められた場合は、退職した場合と同様、個人型確定拠出年金へ年金資産を移換することになります。その後、自分で掛金を追加拠出するか、運用だけを行う運用指図者になるかを社員本人が選択します。

(2)在職中に企業年金が変更になった場合

企業年金の変更をする場合は、変更前の制度に貯めてあった年金資産を新しい制度に引き継ぐか(移換するか)どうかで違いがあります。

①年金資産を引き継がない場合

企業年金を変更する際、変更前の年金資産を新しい企業年金へ引き継がない場合は、基本的に変更前の企業年金に貯めてあった年金資産を変更時点で社員に分配しなければなりません。そして、年金資産を分配すると変更前の企業年金は終わり、新しい制度が一からはじまります。

また、制度を変更する時に年金資産が不足する「積立不足」の場合は、基本的にその不足額を補てんしなければなりません。補てんの時期や方法が会社によって違います。よくあるのは、退職時に会社が退職金として支給する方法ですが、会社が不足額を何年かかけて新しい制度に補てんしていくケースもあります。

ただし、確定給付企業年金は、積立不足があまり起こらないしくみになっています。また、確定拠出年金は積立不足ということはないしくみです。

②年金資産を変更後の企業年金へ引き継ぐ(移換する)場合

変更後の企業年金へ年金資産を引き継ぐ場合の注意点は、変更前の企業年金の積立不足への対応です。この不足額の補てんは会社ごとに対応が異なりますが、よくあるのは次のような対応です。

  • 新しい制度へ一定期間に分割して補てんする
  • 新しい制度へ補てんせず、退職時に退職金として不足分を支給する

いずれにしても、年金資産を新しい企業年金に引き継いだ場合は、基本的に変更前の制度の手続きを自分でする必要はありません。ただし、変更前の制度が厚生年金基金の場合と変更後の制度が中小企業退職金共済制度の場合は、取り扱いが異なるので注意しましょう。

  • 変更前の企業年金が厚生年金基金の場合

    変更前の企業年金が厚生年金基金の場合は、新しい制度に年金資産を移換できるのは(いわゆる)独自部分だけです。厚生年金の代行部分は移換できません。

    そのため、変更前の企業年金が厚生年金基金の場合は、新しい制度に年金資産を移換しても、将来、公的年金の受給開始年齢になったら、2014(平成26)年3月以前に変更した場合は企業年金連合会で手続きをする必要があります。2014(平成26)年4月以降に変更した場合は厚生年金の手続きと一緒に年金事務所で手続きをする必要があります。

  • 変更後の制度が中小企業退職金制度の場合

    変更前の企業年金が税制適格退職年金と厚生年金基金の場合であれば、年金資産を移換して中小企業退職金共済制度へ変更することができます。積立不足の補てん方法としては、退職時点で退職金として受け取るか、制度変更時点で不足額を受け取ることになります。ただし、後者の制度変更時点で不足額を受け取るケースはほとんどありません。

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