金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
1.金融教育のねらいと基本的性格
(1)金融教育とは?
金融教育は、「金融」という言葉が独特の響きをもっているために、入り口の段階で敬遠されてしまう嫌いがある。例えば、「内容が専門的でとっつきにくい」、「資産を増やしたり儲けることばかり教えるのは、子供たちの健全な心の発達を歪める危険がある」などの声に代表される。しかし、金融教育は、以下に示すように、各学校段階を貫いて求められる「生きる力」(すなわち、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力等)を養う上で有効な手段を提供できる教育である。
金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育である。
子供たちが自分の生活や社会について考え、生き方や価値観を練り上げることは教育全体の大きなテーマである。したがって、それを実現するための方法も多様であり、ひとり金融教育だけがそれを担うものではない。しかしながら、お金を手がかりに授業を進めることによって、子供たちは生活や社会にかかわる知識や物事をより具体的に把握し、理解することができる。また、課題の発見や解決に取り組む上でも、問題をより身近なものとしてとらえ、他人事ではなく自分の問題として、現実に即し、自分なりに工夫し、判断し、行動する力を養うことができる。このように、金融教育は子供たちに、現実に足場を置いてしっかり考える基礎力を付け、たくましく生きる力を養わせる上で大きな利点をもっている。