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金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-

(全面改訂版)

4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて

(2)各教科等の学習と金融教育

<1>各教科と金融教育

ア.生活科

生活科の教科目標は、「具体的な活動や体験を通して、自分と身近な人々、社会及び自然とのかかわりに関心をもち、自分自身や自分の生活について考えさせるとともに、その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ、自立への基礎を養う。」と示されている。生活科指導の究極的なねらいは「自立への基礎を養う」ことにある。ここで言う「自立」とは、進んで自ら学ぶという学習上の自立、自らよりよい生活を創り出そうとする生活上の自立とともに、意欲と自信をもって生きていこうとする精神的な自立の三つを意味している。

生活科が目指していることは金融教育の目標と共通点があり、子供が自立への基礎を養うためには、小学校低学年の子供なりにお金に対する基礎的な理解や関心をもたせるとともに、日常生活の中でお金を大切にすることや、望ましい使い方などの技能を身に付けさせることが重要である。これらは生活科の教科目標に示されている、自分と社会とのかかわりに関心をもち、生活上必要な技能を身に付けさせることにかかわっている。

生活科の学習指導要領には九つの内容が示されている。それらは具体的な視点から構成されており、その一つに「生活と消費」に関する視点がある。そこでは、生活に必要なものを買ったり、計画的に使ったりすることができるようにすることが示されている。例えば、自分たちの生活と地域のお店の人たちとのかかわりを通して買い物に対する関心を高めたり(内容(3))、地域の公共物や公共施設を正しく利用することができるようにするとき、お金が必要であることに気付かせたり(内容(4))することができる。また必要なものを実際に買い物する体験を組み入れ、お金のもつ働きに気付かせようとする学習活動などが既に行われている。

このように、生活科の目標および内容を金融教育の視点からとらえ、その視点を学習活動の構成や教材開発などに生かすことによって、生活科において自己の生き方の確立を視野に入れた金融教育の実践が可能になる。

イ.社会、公民

社会、公民は社会生活の理解とよりよい社会を形成するための資質を養うことをねらいとした教科である。学習領域は地理的内容、歴史的な内容、公民的な内容に分かれるが、その中で公民的な領域は、社会に起こる経済的な事象や、政治的な事象などを学習対象とし、これらの事象がどのような原因で生じたのか、また社会にどのような影響をもたらすのかについて考察する力を育てるとともに、民主的、平和的で豊かな社会を形成する力を育てることを目指している。その意味では金融教育と最も関係の深い領域である。

公民的な領域を校種別に見た場合、小学校社会科では第3学年および第4学年の目標として

「(1)地域の産業や消費生活の様子、人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守るための諸活動について理解できるようにし、地域社会の一員としての自覚をもつようにする。」

ことがかかげられるとともに、次のような内容が示されている。

「(2)地域の人々の生産や販売について、次のことを見学したり調査したりして調べ、それらの仕事に携わっている人々の工夫を考えるようにする。

  • ア  地域には生産や販売に関する仕事があり、それらは自分たちの生活を支えていること。
  • イ  地域の人々の生産や販売に見られる仕事の特色および国内の他地域などとのかかわり」

ここでは直接見学して具体的に調べる活動を通して、地域の生産や販売の仕事に携わっている人々の工夫について考えることを求めるとともに、「販売」については販売者の側の工夫を消費者の側の工夫と関連付けて扱うことを求めている。

さらに、第5学年の目標として

「(2)我が国の産業の様子、産業と国民生活との関連について理解できるようにし、我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにする。」

ことがかかげられるとともに、

「(2)ウ  食料生産に従事している人々の工夫や努力、生産地と消費地を結ぶ運輸などの働き

(3)ウ  工業生産に従事している人々の工夫や努力、工業生産を支える貿易や運輸などの働き」

という内容が示され、これらにかかわって、価格や費用、交通網について取り扱うものとされている。

児童は実社会で行われている経済活動を間近に見るとともに、その活動の背後に隠れている社会的な意味を学ぶことによって、中学校や高等学校で本格的に経済や金融の学習をする際の原風景をかたち作る大事な学習といえよう。

中学校社会科では、公民的分野の目標として「(2)民主政治の意義、国民の生活の向上と経済活動とのかかわりおよび現代の社会生活などについて、個人と社会とのかかわりを中心に理解を深め、現代社会についての見方や考え方の基礎を養うとともに、社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる。」ことがかかげられるとともに、次のような大項目と中項目によって金融教育にかかわる内容が示されている。

  • 「(2) 私たちと経済
  • ア  市場の働きと経済
  • イ  国民の生活と政府の役割」

これらの中項目で市場経済の基本的な考え方や現代の生産の仕組みとともに、金融の働きや消費者保護などの内容を扱うことになっている。

ここでは、需要、供給、価格の関係をしっかり学び市場経済の基本的な考え方を身に付け、商品市場や金融市場などについて考察できるようにすることが大切である。また、経済的な諸問題の中で消費者保護が取り上げられるが、その際、契約という観点からしっかり学ばせることが必要である。

高等学校公民科では、「広い視野に立って、現代の社会について主体的に考察させ、理解を深めさせるとともに、人間としての在り方生き方についての自覚を育て、平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う。」という教科目標のもと「現代社会」と「政治・経済」の二つの科目で次のような金融教育にかかわる内容が取り上げられている。

  • 【現代社会】
  • 「(2) 現代社会と人間としての在り方生き方
  • エ  現代の経済社会と経済活動の在り方」
  • 【政治・経済】
  • 「(2) 現代の経済
  • ア  現代経済の仕組みと特質」

これらの中項目で「金融の仕組みと働き」や「市場経済の機能」などの内容を扱うことになっている。

ここでは、小学校や中学校での学習の基礎の上に立って、より専門的な学習を展開することになる。また、高等学校ではマクロ的な視点から資金の循環をとらえ、今日の社会経済システムの問題を考察させることも必要となる。

ウ.家庭、技術・家庭(家庭分野)、家庭(高等学校)

家庭科では、小・中・高等学校の発達段階に応じて、衣食住などの実践的・体験的な活動を通して、家庭生活への関心や理解を深め、生活課題を解決してよりよい生活を工夫し創造する能力の育成を目指している。家庭生活は、人、もの、金銭、時間、空間、情報等の相互関係、個人、家族、社会および環境との相互関係によって成り立っており、生活の営みに必要な「金銭」や「時間」を適切に管理したり経営したりできる能力や態度を身に付けさせることは、家庭科にとって欠くことのできない学習である。

小学校家庭科において金銭教育にかかわる内容は、「D(1)物や金銭の使い方と買物について、次の事項を指導する。」であり、「ア 物や金銭の大切さに気付き、計画的な使い方を考えること。」および「イ 身近な物の選び方、買い方を考え、適切に購入できること。」が示されている。ここでは、身の回りにある物の使い方を見直し、計画的に生活することの大切さが分かるようにするとともに、物を選んだり購入したりするときに、「本当に必要か否か」を考えて意思決定できるようにする。また、金銭の使い方や買った物の活用の仕方についても考え、消費者として主体的に日常生活で実践できるようにするための素地を育てることをねらいとしている。

中学校技術・家庭「家庭分野」において金融教育にかかわる内容は、「D 身近な消費生活と環境」の「(1)家庭生活と消費」の、「ア 自分や家族の消費生活に関心をもち、消費者の基本的な権利と責任について理解すること。」「イ 販売方法の特徴について知り、生活に必要な物資・サービスの適切な選択、購入及び活用ができること。」および「(2)家庭生活と環境」の「ア 自分や家族の消費生活が環境に与える影響について考え、環境に配慮した消費生活について工夫し、実践できること。」が示されている。ここでは、家庭生活における消費の重要性に気付かせ、販売方法の特徴や消費者保護に関する学習を通して、物資やサービスの適切な選択、購入および活用などができるようにするとともに、環境に配慮した消費生活が工夫できるようにすることをねらいとしている。

中学生になると、生活活動範囲が広がり、自分で商品を選択・購入する場面も増加し、消費者被害に遭うことも指摘されている。そこで、中学生にかかわりの深い販売方法として、例えば、通信販売や訪問販売などの利点や問題点を考えさせるとともに、事例を取り上げて具体的に考えさせ、適切な方法で購入できるようにする。また、情報社会になり、ネット販売などの被害者になるばかりでなく、加害者にもなりうることを考えて、具体的な事例を扱うようにする。

消費者保護については、消費者の基本的な権利、消費者基本法の趣旨、クーリング・オフ制度や各種相談機関などを取り上げ、消費者として適切な行動が取れるようにする。物資の選択に当たっては、情報の収集・整理・活用の重要性を理解し、適切な判断ができるようにする。クレジットカードは扱わないが、現金やプリペイドカードによる二者間契約を取り上げ、契約の意味や重要性を扱うこととしている。

高等学校家庭科「家庭基礎」および「生活デザイン」において金融教育とかかわる内容は、「(2)生活の自立及び消費と環境」(「家庭基礎」)、「(2)消費や環境に配慮したライフスタイルの確立」(「生活デザイン」)であり、それぞれ「消費生活と生涯を見通した経済の計画」と「生涯の生活設計」が示されている。「消費生活と生涯を見通した経済の計画」では、「消費生活の現状と課題や消費者の権利と責任について理解させ、適切な意思決定に基づいて行動できるようにするとともに、生涯を見通した生活における経済の管理や計画について考えることができるようにする。」ことをねらいとし、「生涯の生活設計」では、「生涯を見通した自己の生活について考えさせるとともに、主体的に生活を設計できるようにする。」ことをねらいとしている。また、「(1)人の一生と家族・家庭および福祉」では、「ア 青年期の自立と家族・家庭」において、「生涯発達の視点で青年期の課題を理解させ、男女が協力して、家族の一員としての役割を果たし家庭を築くことの重要性について考えさせるとともに、家庭や地域の生活を創造するために自己の意思決定に基づき、責任をもって行動することが重要であることを認識させる。」ことをねらいとしている。

高等学校家庭科「家庭総合」において金融教育とかかわる内容は、「(3)生活における経済の計画と消費」の、「ア 生活における経済の計画」、「イ 消費行動と意思決定」「ウ 消費者の権利と責任」および「(5)生涯の生活設計」の「ア 生活資源とその活用」、「イ ライフスタイルと生活設計」が示されている。ここでは、「生活における経済の計画、消費者問題や消費者の権利と責任などについて理解させ、現代の消費生活の課題について認識させるとともに、消費者としての適切な意思決定に基づいて、責任をもって行動できるようにする。」ことや、「生活設計の立案を通して、生涯を見通した自己の生活について主体的に考えることができるようにする。」ことをねらいとしている。

また、「(1)人の一生と家族・家庭」では、「ア 人の一生と青年期の自立」において、「生涯発達の視点で各ライフステージの特徴と課題について理解させ、青年期の課題である自立や男女の平等と協力などについて認識させるとともに、生涯を見通した青年期の生き方について考えさせる。」ことをねらいとしている。

エ.その他の教科

1)国語

国語は、国語の適切な表現力や理解力、伝え合う力などを身に付けることをねらいにしている。国語と金融教育との関連については、例えば国語で扱う題材として金銭や生活設計などを用いた場合、いわば間接的に金銭や生活設計に関する関心を高めることにつながり、結果として金融教育と関連する。また、こづかいなどの金銭の使い方について討論したり、作文にまとめたりする学習を行う場合、国語で育てる表現力などに関連があると考えられる。

2)算数・数学

算数・数学は、数量や図形についての基礎的・基本的な知識および技能の習得、概念や原理・法則の理解、数理的な表現や処理の仕方などを身に付けることをねらいにしている。学習においては、日常生活の事象と関連させた工夫が求められている。

金融教育との関連については、小学校では、例えば加減乗除に関する学習において、ものの値段や費用などを題材として取り上げる場合、そこでの学習は算数のねらいの実現を目指すとともに、生活における消費や販売に関する学習の役割を果たしている。

中学校や高等学校では、例えば関数を用いて価格や費用を計算したり、金利に関する学習を数学において取り上げたりすることが考えられる。特に高等学校数学「数学活用」には、「社会生活と数学」の項目が設けられており、例えば預貯金やローンについて単利法と複利法の比較、元利合計、ローンの支払いなどについて学習させることができる。このほかに、水道料金や電話料金などの仕組み、税金や年金の仕組みなどを取り上げることも考えられる。

3)高等学校における専門教育に関する教科

高等学校における専門教育に関する教科については、学習指導要領において、農業、工業、商業はじめ計13の教科が示されている。中でも、次の科目において金融教育と関連付けた展開が可能である。

農業 農業経営、農業経済、食品流通
商業 ビジネス基礎、マーケティング、商品開発、広告と販売促進、ビジネス経済、ビジネス経済応用、経済活動と法、簿記、財務会計Ⅰ~Ⅱ、原価計算、管理会計、電子商取引
水産 水産流通
家庭 消費生活

これらの科目を扱う場合には、普通科の科目との関連にも配慮した指導計画を作成するようにしたい。

4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けての目次

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