金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて
(4)教材化と指導方法の工夫
<2>指導方法の工夫
ア.金融教育の視点から問いを工夫する
金融教育には、固定した指導内容の範囲と体系が用意されているわけではない。そのため金融教育は、各教科等の内容に金融教育の視点を加味して展開する方法がとられる。このことから、指導方法としては、各教科等の目標達成を優先しながらも、金融教育の視点から問いを工夫し、児童生徒の興味関心を喚起したり、お金と生活や社会との関連に気付かせたりする工夫が求められる。教科等で実施される金融教育においては、一定のまとまった内容を理解させるというよりも、金融という角度からものの見方や考え方に気付かせることが重要である。例えば、生活とお金の関係、商品やサービスの価値とお金の関係、お金を融通する社会の仕組みなどの金融の視点を明確にし、学習問題を工夫したり、発問を工夫したりすることが考えられる。
イ.作業的体験的な学習の工夫
金融教育にかかわる学習活動には、例えば買い物の計画を表にしたり、生活設計を金銭を含めて計算させたりする学習がみられる。また、将来の家計を予想したり、「起業」をシミュレーションしたりする学習活動もみられる。このような擬似体験的な学習を行うことにより、児童生徒の興味関心を喚起すると同時に、具体的でより実感できる学習を進めることが可能となる。
また、消費者と販売者、生産者などの社会の仕組みに関連した学習を行う際、それぞれ当事者を想定したロールプレイングを行うことも有効な方法である。消費者の視点からだけでなく、販売者の立場を想定することにより、金融や経済の仕組みについてより多面的な理解を促すことができる。
さらに、例えば作物の栽培や料理などの具体的な活動をはさみながら、それらの仕事の意義に気付かせたり、販売方法や商品選択について取り上げたりする学習が考えられる。児童生徒の豊かな体験を生かすことにより、生き生きした場面を作り出すことが可能となる。
ウ.見学や調査、外部人材の活用を工夫する
金融教育にかかわる内容のほとんどは、実生活や実際の社会で行われている事柄である。金融や経済に関する用語や概念が難しいものであっても、その業務を職業として担当している実務者から学ぶことにより、より具体的な理解が可能になる。金融や経済の仕組みおよび消費者保護等に関する内容については、実務担当者等にインタビューしたり、講師として授業を担当して頂いたりする工夫が考えられる。
エ.発表や表現の場面を設ける
金融教育においては、共通の学習内容を一斉に学習するというよりも、児童生徒が自ら調べたり、その結果を発表して相互の意見を交換し合ったりする学習を工夫することが大切である。一定の知識を共通に習得するというよりも、調べた結果を発表したり、自分自身の考えを表現したりする学習が幅広く実施されることが望ましいと考える。そのためには、学習指導過程を通じて、学習問題の想定や調べ学習の準備、話し合いの活動等を計画しておくことが大切である。