金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて
(3)全体計画、指導計画の作成
<2>指導計画の作成
ア.指導計画作成の意義
学校教育は意図的、計画的かつ組織的に営まれることから、いかなる場面においても指導計画の作成が不可欠である。このことは学校で金融教育を推進する場合にも例外ではない。
指導計画は、教科等ごとに年間、単元や題材、本時など様々な時間の幅で作成される。そこでは、指導に当たっての目標、目標を実現させる指導の展開、そして指導の過程や結果における評価についてそれぞれ計画する必要がある。目標と指導と評価について総合的に計画したものが広義の指導計画である。狭義には、特に指導場面の計画を指導計画ということがある。ここでは、金融教育にかかわる教材や資料、学習活動、地域の人たちの協力などについて、指導の内容や手順を具体的に計画する。なお、総合的な学習の時間に金融教育を重点的に取り上げる場合には、目標や指導内容、教材などが金融教育と直接結び付いたものになる。
イ.指導計画作成の手続き
各教科等の指導において金融教育を位置付けて実践するとき、次のような手続きで指導計画を作成することが考えられる。
- 当該教科等の趣旨や目標等を踏まえて、単元や題材の指導目標を設定する。教科等によっては、金融教育の目標や内容が単元や題材の指導目標として、直接に位置付かない場合もあることに留意する。
- 目標を実現させていく筋道(指導の展開)において、金融教育の目標や内容がどこでどのように位置付くのかを明確にする。その際、教科等によっては学習内容のレベルにおいてかかわりがあるだけでなく、教材や題材、学習活動などにおいて金融教育とかかわりをもたせることができることに留意する。
- 指導の主眼はあくまでも当該教科等の目標や内容の実現を図ることである。それらの学習(指導)の過程に金融教育の内容を指導に当たっての配慮点(金融教育の視点)として示すことになる。
- 目標の実現状況を評価する方法を示しておく。その際、金融教育の視点についても子供の学習にどのように影響したのか、定着の状況を見極めるための方法を計画しておく。
金融教育の視点を重視した指導計画の作成に当たっては、金融教育の趣旨や目標等を理解するとともに、教材や資料、子供の学習活動の構成、地域の人たちや機関等の協力の得方などを計画し、子供たちがお金や金融に対する理解と関心を深めることができるように配慮する。
ウ.指導計画作成にかかわる配慮事項等
従来の指導計画は、教師が学校の考え方や子供の実態等を踏まえて作成し、それに基づいて地域の人たちに協力を求めてきた。学校や教師から地域の人たちへの一方的な協力依頼であったように思われる。金融教育の実践に当たっては、子供も教師も地域の専門家に学ぶという側面が強く、その意味では指導計画の作成段階から、地域の人たちや関係機関などと共同で作成するという姿勢が求められる。共同で指導計画を作成・実施し、そこでの指導に対する評価もともに行うようにしたい。
そのためには、金融教育の指導計画を作成するとき、地域で金融にかかわって活動している人たちの存在を理解するとともに、都道府県の金融広報委員会をはじめ、協力の得られる金融機関や団体等を把握することが重要になる。それらの協力場面を各学年の教科等の単元や題材にバランスよく位置付け、無駄な重複を避けるようにする。それらの人たちにも本来の仕事があることから、できるだけ余裕をもって打ち合わせを行うなど、十分な配慮が必要であることは言うまでもない。