金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(全面改訂版)
4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて
(2)各教科等の学習と金融教育
<2>道徳、特別活動と金融教育
ア.道徳
道徳教育の目標は、小学校、中学校ともに「学校の教育活動全体を通じて、道徳的な心情、判断力、実践意欲と態度などの道徳性を養うこととする。」と示されている。これを受けて、小学校の道徳の時間は「道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深め、道徳的実践力を育成する」ことを、中学校では「道徳的価値及びそれに基づいた人間としての生き方についての自覚を深め、道徳的実践力を育成する」ことを、それぞれ目標にしている。道徳の内容には、自分自身に関すること、他の人とのかかわりに関すること、自然や崇高なものとのかかわりに関すること、集団や社会とのかかわりに関することが、それぞれ学年ごとに示されている。道徳は家庭や社会での生き方を学ぶことを目標や内容としており、金融教育の目標とは極めてかかわりが深い。
例えば次のような内容には、金融教育の目標や内容と直接的にかかわりがある。
- 物や金銭を大切にし、(中略)規則正しい生活をする。(小学校第1学年および第2学年)
- 約束や社会のきまりを守り、公徳心をもつ。(小学校第3学年および第4学年)
- 働くことの意義を理解し、社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする。(小学校第5学年および第6学年)
- 望ましい生活習慣を身に付け、(中略)節度を守り節制に心掛け調和のある生活をする。(中学校)
- 法やきまりの意義を理解し、遵守するとともに、自他の権利を重んじ義務を確実に果たして、社会の秩序と規律を高めるように努める。(中学校)など
道徳の時間には、かかわりのある内容を取り上げるときだけでなく、内容を身に付けるための資料を決定し活用する際にも金融教育の視点を重視することにより、お金や金融に対する関心と理解を深めることができる。
イ.特別活動
特別活動は、「望ましい集団活動を通して、(中略)集団や社会の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間としての生き方についての自覚を深め、自己を生かす能力を養う。」(中学校)ことを目標としている。小学校や高等学校においても、ほぼ同様な内容の目標となっている。
各校種には、金融教育に関して、次のような内容が段階的に示されている。
(小学校)
- 希望や目標をもって生きる態度の形成、基本的な生活習慣の形成(学級活動)
- 勤労の尊さや生産の喜びを体得するとともに、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動を行うこと(学校行事/勤労生産・奉仕的行事)
(中学校)
- 社会の一員としての自覚と責任、ボランティア活動の意義の理解と参加、望ましい勤労観・職業観の形成、主体的な進路の選択と将来設計など(学級活動)
- 勤労の尊さや創造することの喜びを体得し、職場体験などの職業や進路にかかわる啓発的な体験が得られるようにするとともに、共に助け合って生きることの喜びを体得し、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動を行うこと(学校行事/勤労生産・奉仕的行事)
(高等学校)
- 社会生活における役割の自覚と自己責任、学ぶことと働くことの意義の理解、望ましい勤労観・職業観の確立、主体的な進路の選択決定と将来設計など(ホームルーム活動)
- 勤労の尊さや創造することの喜びを体得し、就業体験などの職業観の形成や進路の選択決定などに資する体験が得られるようにするとともに、共に助け合って生きることの喜びを体得し、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動を行うこと(学校行事/勤労生産・奉仕的行事)
このように、特別活動の時間においても自己の生き方についての自覚を深めることにかかわって、金融教育の目標や内容が位置付いている。金融教育の重要な実践場面としてとらえ、子供たちの主体的な活動を展開することができる。