わが家の味方「生命保険」
2.保険の上手な入り方ABC
(A) 保険に入る目的をはっきりさせる
営業職員に勧められた保険になんとなく入る、というのはよくありません。必要ない保障のために、毎月数万円を何十年も払うことにもなりかねません。自分や自分の家族には、どんな保障が必要なのか、いくら必要なのかを、まず考えてみましょう。
たとえば、万一父親が亡くなると家族がその後の生活費に困るので、父親にはまず死亡保障、それから病気をしたときのための医療保障、また母親には病気に備えるための医療保障と少しの死亡保障、そして子ども達にはけがのための医療保障、という具合です。
それらの目的に合う保険を自分で考え、またはファイナンシャルプランナーなどの専門家と相談して選ぶようにします。保険金額はどのくらい必要なのか、いつまで必要なのかも、あわせて考えましょう。
(B) 保険料は必要経費と考える
保険は貯蓄と違って掛けた分のお金(保険料)が戻ってこないから入りたくない、あるいは多くお金が返ってくるほうがいいから、そのためには保障が小さくてもかまわない、と考える人がいますが、この考え方は危険です。
貯蓄だけで万一に備えようとしても限界があります。保険料をけちった分多少は貯蓄が増えても、病気や事故ということになると、その貯蓄はあっという間に消えて、足りなくなってしまうかもしれません。
保険は家を建てるときの土台のようなものです。土台がきちんとしていないと、雨や風で家は倒れてしまいます。保険は、家庭や生活を守るために絶対に必要なものです。
保険料は、家賃や食費と同じように必要経費と考えましょう。保険の貯蓄性を重視しすぎると必要な保障が手当できなくなってしまいますから、貯蓄性よりも保障を優先させて考えることが大切です。
(C) ひとつの目的にひとつの保険
最近の保険の傾向のひとつに、ひとつの保険で死亡保障も年金も何もかも手当てしてしまいましょう、というものがあります。確かにそれもひとつの方法でしょう。
しかし、そのために保険がとても複雑になってしまいました。ただでさえわかりにくい保険が、さらにわかりにくくなったので、目的に合わせて保険を選ぶのが難しくなっています。また、最初からすべてがセットになっているので、人によっては必要のない保障まで買わされるハメになります。
保険料の支払いが大変になったときは、必要度の低い保険を解約したり、減額したりしますが、オールセットの保険では、それが難しいのです。保障額を減らしたり増やしたりするときも、とてもやりにくいものです。
レストランと同じように、コースメニューは一見割安に見えても、個々の希望に応じられず、結局は高くつきます。アラカルトメニューのように、必要と目的に応じて保険を組み合わせて入るのがお勧めです。
(D) ひとつの保険は一人のため
妻の保障を確保するために、夫の保険の特約という形で保障を付ける場合があります。たとえば、夫の医療保障を「夫婦型」や「家族型」にすることで、妻は自分自身の保険に入らなくても、入院したときに給付金がもらえます。
一見便利そうですが、ちょっと困ったことがあります。この形ですと、妻の保障額は自動的に夫の6~8割(夫の入院保障5,000円なら、3,000~4,000円)と決まってしまうことです。夫と同額の保障が欲しいと思ってもできません。また、夫の保険が満期をむかえたり保障が終わる時点で、妻の保障も終わってしまいます。これでは、いざというときに役に立たないかもしれません。
定期付終身保険などにも、夫婦保険といわれるものがあり、夫婦が別々に保険に入るより保険料が割安といわれています。しかし、普通は妻に大きな死亡保障は必要ありません。また、いろいろな制約があって自由に保険金額を決められないことも多いようです。夫婦セットですと一見割安のようですが、不要の保障まで買ってしまうことが多いわけです。
自由に設計できること、将来の変更がしやすいことから、やはり夫と妻は別々の保険で保障を手当てするのがいいですね。
(E) 入りたい保険のイメージをはっきり伝える
悪い保険の入り方は、保険の営業職員さんに勧められるままに、「まあ、このぐらいの保険料ならなんとか払えるから」と加入してしまうことです。
大切なのは、あなたが持っている“保険に対する希望”を、はっきりと伝えることです。たとえば、死亡保障は、3,000万円欲しい、入院のときは1日10,000円欲しい、保険料は月15,000円までにおさえたい、などの希望を明確に言うことです。
あなたの希望が具体的であればあるほど、営業職員もそれに沿った保険を設計することができます。いい営業職員なら、あなたの希望にできるだけ応えようとしてくれるはずです。この時にいい加減な対応をする人や、保険の知識が不十分な人なら、担当者を代えてもらうか、他の保険会社にあたったほうがいいでしょう。
保険は一度加入した後も、いろいろな変更を加えながら一生つきあっていくものです。信頼できる、うまくコミュニケーションのとれる担当者を見つけることも、とても大切なことです。
(F) 複数の保険会社に見積りを頼む
普通は最初に来てくれた保険会社の営業職員か、知り合いの保険会社の人を通して、保険に入ることが多いようです。
基本的には、どの保険会社でも同じような保険をあつかっているのですが、保険会社によってはあなたの希望する保険をあつかっていなかったり、加入できる最低保険金額が大きかったりします。保険料も保険会社によってだいぶ違います。ですから、保険を設計してもらうとき、一社だけに頼んだのでは、希望する保険がなかったり、保険料の高い保険に加入してしまうことになります。保険料は何十年も払うものですから、月数千円の差でも膨大なものになります。食料品や家具を買うときと同じように、複数の会社のものを比べて、いちばん希望に合って、いちばん保険料の安いものを選んで加入するようにしましょう。
(G) 設計書を入念にチェックする
保険の営業職員は、勧める保険の設計書を必ず持ってきてくれます。この設計書には、どんな保障があるか、保険金額がいくらなのか、保障は何歳までか、保険料はいくらなのか、などが書いてあります。保険に入るときにはこれをよく理解することが大切です。
5,000万円の保障が一生続くと思っていたのに、実は50歳までだったとか、保険料は60歳まで払えばいいと信じていたのに、終身払い(生きている限り払う方法)だったとか、10年ごとに保険料が値上がりする仕組みになっていたとか、そういう話は後を絶ちません。加入した後で、こんなはずではなかったと泣かないために、保険の設計書は入念にチェックし、わからないところは担当者に尋ね、納得がいくまで説明してもらいましょう。
「説明を聞いてない」「いや説明しました」という後々のトラブルを防ぐため、説明を受ける時に録音しておくのもよい方法です。
(H) 保険会社の安全性もチェックする
保険会社はつぶれない(破綻しない)、と考えられていたのは昔の話。不良債権を抱えていたり、長引く不況の影響で会社の経営状態が思わしくないのは、保険会社も同じです。1997年以降、7社が経営破たんしました。
保険会社が破綻しても、保険契約は「保険契約者保護機構」で補償されますが、保険金額が減らされる場合もあります。あてにしていた保険金額が全額受け取れなければ困りますから、加入するときには、その会社の安全性(経営状態はどうか)をチェックすることも必要です。
保険会社の安全性を知りたいときには、格付け会社による「格付け」や保険会社が決算時に毎年発表する「ソルベンシーマージン比率」が、参考になります。
保険会社の格付けは、その会社の保険金支払い能力をランク付けしたものです。格付け会社のホームページなどで調べることができますが、保険会社に直接電話して「お宅の格付けはどうなっていますか」とたずねるのもいいでしょう。それに対する会社の対応も、信頼度の目安になります。ソルベンシーマージン比率は、将来発生する保険金支払いのための財務力が十分あるか、を判断する基準のひとつです。この数値が200%以上なら、ひとまず安心と言われています。
どちらも絶対的な基準ではありませんから、ひとつの数値だけをみて判断しないように、気をつけましょう。
(I) 定期的に見直そう
保険は、数十年単位でつきあうもの。なかには文字通り死ぬまでつきあう「終身保険」や「終身年金」などもあります。
いったん加入した保険が最初は希望に合ったものであっても、家族構成が変わったり、あなた自身の価値観が変わったりすればすぐに身の丈に合わなくなります。また、いままでになかった新しい優れた保険商品が発売されることもあります。
ですから、保険は一度入ったらそれで終わりではなく、定期的に、あるいは人生の節目節目に見直していくものなのです。
手直しの必要があれば、6章でも紹介する方法を用いて、もう一度保険を着心地よくあつらえ直してください。
6.失敗しない保険のリフォーム