わたしはダマサレナイ!!
第26話 債券買え買え詐欺
高齢者に債券購入などの名義貸しを持ちかける詐欺事件が急増
高齢者に実体のない債券などの購入を強要する「買え買え詐欺」ともいわれる「劇場型勧誘」は、まるで配役が決まったドラマのように展開し、最近は手口がますます巧妙・悪質化しています。今回は、突然電話で債券購入の「名義貸し」を持ちかけられ、結局お金を騙し取られてしまった詐欺事件をご紹介します。
point1 実在する金融機関を騙(かた)り「購入者リスト」に掲載された特別な人だということを強調
この詐欺は、実在する証券会社等の名前を騙り、債券などの購入を確認する電話がかかってくることから始まります。
対象になるのは70~80歳代の高齢者です。業者から「債券(社債)を買いませんか」と突然聞かれても、被害に遭う高齢者は債券等の知識には疎く、意味が分からないままに業者の話を聞いてしまいます。
なぜ自分に電話してきたのかと尋ねると、悪質業者は「あなたの名前が債券の購入者リストに掲載されているので電話した」と、リストに載っている特別な存在であることを強調します。
point2 今話題になっている、誰もが知っているビッグプロジェクトの名前を出し、信用させる
悪質業者は、その債券はある会社が今、世の中で話題になっている事業やプロジェクトに参入するにあたり債券を発行し、リストに掲載されている人だけに特別に販売すると説明し、例えば2020年に開催される東京オリンピックなど、誰もが知っているビッグプロジェクトの名前を出して高齢者を信用させます。
そして、「その会社の債券を買えば話題も十分なので儲かります。1千万円ですが、買いますか?」と尋ねます。「そんな大金は無い」と断ると、業者はすかさず「それでは名前を貸してください」と名義貸しを持ちかけます。高齢者が戸惑っていると、業者は「購入のお願いではありません。リストに載った人でないと買えないので、買わないならぜひ名前を貸して欲しいのです」と迫ります。
point3 安易な名義貸しが大変なことに!
悪質業者は「お金は当社が払う」「迷惑は一切かけない」と被害者を安心させ、「このことは絶対に誰にも話さないように」と念を押します。そして債券の発行会社から連絡が入ったら「ハイ」とだけ答え、債券発送日が分かったら連絡をくれるようになどと依頼してきます。
この電話の2~3日後に、債券の発行会社から1千万円入金のお礼の電話が入ります。これが複数の業者を装った劇場型勧誘と気づかない被害者は「本当の話だったんだ…」とすっかり信じ込んでしまうのです。
point4 「インサイダー取引法違反」「裁判沙汰」脅迫的な言葉をたたみかけ、恐怖のどん底に突き落とす
数日後、悪質業者からの電話で事態は急変します。
「個人にしか販売しない債券なのに、法人名で入金したことがバレてしまった。金融庁から違法であるインサイダー取引を疑われ、裁判になる。ついては名義を貸したあなたにも責任が発生する」と「法律違反」「裁判」といった言葉を繰り返し、被害者を恐怖のどん底に突き落とします。被害者が怯えると、悪質業者は「当社で裁判を回避するため弁護士に依頼しなければいけない。いくら出せるか?」などと脅迫まがいの圧力でたたみかけます。パニックになった被害者は、元の1千万円という金額から「300万円くらいなら工面できそうだ」と自ら提案してしまいます。
悪質業者は「明日担当が取り行く」と告げ、被害者は翌日訪れた担当者(いわゆる「受け子」)にお金を渡してしまうのです。
最近は振り込め詐欺救済法による口座凍結など銀行の監視の目が厳しくなったため、金融機関を通じて振り込ませる「振込型」ではなく、バイク便を使ったり、業者が直接現金を取りに来る「現金受取型」の方が多くなっています。(警察庁によると平成25年度は振込型が約2割、現金受取型が約8割。)
今回ご紹介した「買え買え詐欺」は「名義貸し」したと消費者を脅迫し、強引にお金を騙し取っていく詐欺です。
実在の証券会社等の名前を騙った身分詐称詐欺、また、架空の取引を装って電話で勧誘することは特定商取引法における電話勧誘販売の不実告知、消費者契約法の不実告知など、業者の法律違反は多々ありますが、いったん支払ってしまったお金を取り戻すことは容易ではありません。「名義を貸すだけ」という安易な話には絶対に耳を貸さないことが大切です。業者にお金を渡してしまった場合は、すぐに警察に相談してください。また名義貸しを持ちかける不審な電話がかかってきた場合は、お金を支払う前に地元の消費生活センターに相談しましょう。
スマートフォンでマンガ!電子ブックで金融トラブル防止について学ぼう。
第26話の内容を電子ブック(epub形式)として読むことができるようになりました。
詳しくは以下のリンクまたはQRコードから。
関連サイト
「債券買え買え詐欺」についての詳しい情報は、以下をご覧ください。
- 突然「あなたの名前で社債を購入した」と電話をしてくる手口に注意!(国民生活センターHPへリンク)
- 東京オリンピックに関連した詐欺的トラブルにご注意ください!(No.2)(国民生活センターHPへリンク)
くらしに身近な金融知識をご紹介する「くらし塾 きんゆう塾」
「わたしはダマサレナイ!!」のほかにもお役立ち連載がいっぱいです。