第62話 強引な勧誘や解約の妨害、高額なキャンセル料など
中古自動車の売却トラブルが増加中

point1  中古自動車の売却トラブルが増加している背景

全国の消費生活センター等に寄せられた中古自動車（以下、中古車）の売却に関する2021年度の相談件数は、前年度から約25%増え、2022年度もさらに増加しました。

ここ数年、半導体不足の影響で新車に買い替える消費者が減り、中古車市場における中古車の在庫が減少しています。車買取り業者（以下、業者）は中古車の買取りに力を入れる必要があり、それが悪質な契約方法などによるトラブル増加の一因と考えられます。また、70代以上の相談者が増えており、運転免許の返納件数の増加が影響しているとも考えられます。

point2  トラブル相談の約9割弱が契約や解約に関するもの

中古車の売却トラブルに関する相談は、「契約・解約」に関連するものが全体の約87％（2021年度）を占めています。とくに、業者が居座るなど強引な勧誘で契約を迫ったり、高額なキャンセル料を設定して解約しにくくするといった事例が多数寄せられています。

• 事例①
  中古車の一括査定サイトに申込み後、連絡が来た数社の業者に査定を依頼。最初の業者から「今契約すればこの査定額です。他社はもっと安い」と言われて契約した。しかしほかの業者の査定額の方が高かったので、契約当日に解約を伝えたが応じてくれず、「解約するなら査定額の20%のキャンセル料が発生する」と言われた。

• 事例②
  インターネットで探した業者に査定を依頼。査定額を聞き、他社と比較して検討したいと伝えたが帰ろうとしない。「売却の予約だけでも」と懇願されて、契約とは思わずにサインをした。その後、別の業者に決めたことを伝えると「契約書にサインをしているので〇十万円のキャンセル料がかかる」と言われた。

point3  車の売却はクーリング・オフの対象外！
契約するときは慎重に

車の売却は特定商取引法の対象から除外されているため、クーリング・オフ（無条件での契約解除）が適用されません。一度合意した契約内容を一方的に解約や変更することは難しく、契約は慎重に検討する必要があります。

トラブルを回避するためにはまず、業者から「これより高い査定額はない」、「今すぐ契約すれば金額を上乗せする」と契約を急かされても、冷静に考えてその場で契約をせず、複数の業者の査定額を比較検討することが大切です。強引に契約を迫られた場合は、「査定をお願いしただけで今は売らない」、「ほかの査定額と比較してから決める」と言ってきっぱり断りましょう。また、一括査定サイトは一度に複数の業者から査定を受けられますが、さまざまな業者から勧誘が来る可能性があることを理解して、上手に利用しましょう。

契約をしてしまうと、原則として契約書に拘束されるため、契約書の内容を確認しないうちは決して契約してはいけません。とくにキャンセル料に関しては、金額はもちろん、発生する条件を理解して契約することが大切です。また、「売却の予約」などと偽って契約書にサインをさせる悪質なケースも少なくないので、どのような書面でもサインをする前に必ず確認してください。契約者が高齢者の場合は、家族など信頼できる人が査定の場に立ち会うことをお勧めします。

高額なキャンセル料については、契約書に記載された金額であっても「契約から解約までの時間が極端に短い」、「著しく高額に設定されている」など状況によっては、消費者契約法により「業者に生ずべき平均的な損害額」を超える金額が無効になる可能性があります。

こうしたトラブルに巻き込まれたり、少しでも不安に思ったら消費者ホットライン188へ早めに相談してください。